[コラム]ナードマグネット・須田とハンバーグオムレツ・カリスマのEIGA・BU第23回

[コラム]ナードマグネット・須田とハンバーグオムレツ・カリスマのEIGA・BU第23回(2015/05)


カ:どうも!夢と希望の黄金週間なのに、肋骨骨折が悪化して殆ど動けませーん!!ハンバーグオムレツのカリスマです!

須:どうもー!やっと風邪が治りました!ナードマグネット須田です!EIGA・BUボロボロやないか!

カ:いやー折れてわかる。肋骨ってものすごく治りにくい(笑)しかも折れ方が悪かったのか途中で骨が割れてきてあら大変。
須田くんも北海道遠征の前後からえらい体調崩してたね。

須:そうなんですよ…風邪がずっと長引いててひどかったです。おかげで札幌初日のMixtapeは過去最高にエモい演奏になってたって言われましたけど(笑)さてさて!今月われわれが取り上げるのは、各方面で話題沸騰中の作品でございます!

カ:その名も『セッション』!!これは俺の上半期No.1!



とんでもない天才監督の誕生ですよ!

須:はい!ジャズドラマーを志す青年に待ち受ける、鬼コーチによる壮絶な地獄レッスンを描いた作品で、そんな先生役のJKシモンズさんが今年度アカデミー賞の助演男優賞を受賞しました。映画好きからも音楽好きからも注目されてる一本ですね!

カ:JKシモンズと言えば旧『スパイダーマン』三部作の編集長役が強烈な印象を残してる名優!



今回も怪演してたね!めちゃムキムキやし!

須:僕は『JUNO』の超優しいお父さんのイメージが強かったので、マジでびっくりしました。



ルックスも強烈ですが、あのボキャブラリー豊かな罵倒の数々!どうしてもハートマン軍曹を連想してしまいますね。つまりこれはジャズ版の『フルメタル・ジャケット』です!



カ:良い例えやね!あんなに厳しくされたら俺やったら直ぐに心折れてしまうわ(笑)まさに軍隊のやり方やねんな。今までの人生を全否定して、まっさらな状態にしてから叩き込むっていう。

須:一種の洗脳なんすよね。ブラック企業の新人研修とかもあんな感じらしいですが…。だから今作の主人公もどんどんおかしくなっていく。途中で結構ビックリする展開があるんですが、そこでの主人公の行動とか本当にヤバい。死ぬぞお前!(笑)

カ:でも、あの感覚わかる。俺、名前は伏せますが日本3大ブラック企業の一つで働いててね、丁度あんな感じになってました(笑)確実に身体ぶっ壊れるって状況やけど、先に心がダメになってるから歯止めがかけられない。側からみれば狂人以外の何者でもない。

須:こえぇ?…抜け出せてよかったっすね…(笑) そしてそんな主人公と相対する鬼コーチもまた狂人だと思うんです。「極悪非道なクズ野郎」という見方をする人も多いかもですが、僕は「もとはマトモだったはずなのに自分の理想の音を追い求めすぎて頭がおかしくなった人」に見えたんですよね。時折「人間の顔」が見える瞬間がある…まあそれも相手を油断させるためかもしれないんですけど(笑)

カ:そうやね。でもあれは、一方的な狂気というよりは教える側も教えられる側も狂っていくからね(笑)だから、あの2人の関係性はある意味正しいよ。師弟関係として見れば一つ完成形やと思えた。とはいえ、あんな感じで自分のメンバーをビシバシいきたくないけど(笑)

須:バンドマンが同じことやったらすぐ解散しそうですね(笑) なので映画はどんどん「ふたつの狂気」のぶつかり合いになっていくんですよね。クライマックスは本当に圧巻でした!手に汗握りましたね…

カ:あのクライマックスの9分19秒が映画史を変えるって触れ込みやったけど、確かにあそこがなければ凡庸な映画で終わってた!本当に手に汗握る最高のクライマックス!もう完全にアクション映画やで(笑)

須:演奏シーンのはずなのに段々ガチンコのシバき合いに見えてきますからね(笑) 普通の音楽映画だったらクライマックスの演奏シーンってもっと多幸感溢れる演出にするはずなんですけど、コレはまったく違う!

カ:ほんま、何気に今まで誰もやってなかった手法やで!ネタバレするから詳しくは言えないけど、バンドマンなら特にシンクロ出来ること間違い無し!俺、この映画をピクミン(ex.GRIKO)と観に行ってんけど、二人とも大興奮したもん!

須:ピクさん!ドラマーの感想はぜひ聞いてみたいですねえ。「ジャズが正しく描かれていない!こんなものはジャズじゃない!」みたいな批判も目にしますけど、まあ純然たるジャズの映画ではないですからね…もっというと音楽映画とも言いがたい(笑) 異様なスポ根ものです(笑)

カ:ピクと二人でセッションのネタが出来るようになったからね(笑)「ファッキン・テンポ!」が俺らの合い言葉です(笑)監督は音楽映画やのに、あえて別のフィルターを通して描くことで逆に広い層に受け入れる怪作にしたっていう、ほんまなんちゅう天才や!

須:広い層にウケてるってのはほんとに。僕が行った回は満席で、客層もさまざまでした。隣に女子高生が3人くらいで見に来てたんですけど、フレッチャー先生が怒鳴るたびに「ヒィッ!」って飛び上がってて面白かったです。良い観客(笑)

カ:普通はあのキャラだけで押してしまって「トレーラーだけは面白い映画」になりがち。こんな気遣いが出来るなんてほんま若手監督とは思えないよ! ちなみに俺は3人のドラマーがなじられながら順番に叩かされるシーンが怖すぎで指くわえっぱなしでした(笑)

須:あのシーン、主人公もですけど他の2人が超かわいそうですよね(笑)ただの当て馬やないか!って。結局あの先生の「指導」ってテクニック論の極北って感じで、音楽ってそれだけじゃなくね?っていう意見もわかるんですが、だからこそ「映画としては」ムチャクチャ面白いものになってると思います。

カ:音楽映画って変な固定観念に縛られてるジャンルの一つやからね。この作品はそんな垣根をぶち壊してくれる非常に革新的なものだと思います。それでいてカルト作品では無いから万人にお勧め出来るし。さて、そろそろ今月もお別れの時間が迫ってきました。締めに向けてファッキンテンポしていきましょう、須田くん!

須:倍テン・スウィング!そんなわけで『セッション』我々は大変おもしろく見ました。結構ヒットしてるみたいなのでまだまだ劇場で見られるはずです!この迫力はぜひとも大画面&爆音で体感してほしいので、皆さん是非とも映画館で!そしてドラマーがなかなか上手くなってくれなくて悩んでるバンドマンの諸君、絶対にマネしちゃダメだよ!!

カ:寛容さは大事です!ではまた来月お会いしましょう!ブレイブ・イン!!




プロフィール 如何の通り

カリスマ: 本名不肖、牙の勇者の異名を持つキョウリュウレッド。
地球と大阪市北区の平和を守る傍らハンバーグオムレツというジャンクフードパンクバンドのボーカルとしても活動している。
EIGA・BUの「観る」担当。
HP:http://omelette.sekaibi.com

須田亮太: 顔出しNGというわけではございません。
ナードマグネットというバンドのギター&ボーカル。パワーポップという不遇のジャンルを今一度普及させるべく、大阪を中心に活動中。アイドルも好き。
EIGA・BUの「見る」担当。
HP:http://nerd-magnet.com/

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