[コラム]「ナードマグネット・須田とハンバーグオムレツ・カリスマのEIGA・BU第5回」(2013/11)


カ:ちわっす!!EIGA・BUの餃子はタレをつけない方、ハンバーグオムレツのカリスマです。

須:こんにちわ!ラー油とかめっちゃ使います!ナードマグネットの須田です!

カ:最近、東京のバンド仲間から聞いてんけど、下北では王将の餃子のタレにめちゃくちゃコショウ入れるらしいよ。ちなみに下北の王将は日本一の売り上げをほこってるらしい、凄いよね。

須:コショウは入れないですね…すんげえ味濃そう。関東と関西では餃子のパリパリ感が違うらしいですね!って何の話やねん。そんなわけで今月もEIGA・BUのお時間ですよ!

カ:いつもいつもすいません。さて、今月の極上の作品は何かね?あんだけ夏の名作ラッシュが続いたんだから少々の作品ではビックリせんよ、俺は。

須:そろそろつまんない映画に当たってボロクソにけなす回とかあってもいいんじゃないかと思ったりしてましたが、いや?まだまだ面白い作品はありますね。ということで今月取り上げるのは『クロニクル』(http://www.youtube.com/watch?v=StX8ww4AmtI)というアメリカ映画です!

カ:『クロニクル』映画ファンの中で話題の作品やん!久々に口コミでヒットした作品。トリッキーな手法で撮られてるのにきっちり作品として成立してた。

須:もともと去年くらいからかなり話題にはなってたのになかなか日本公開されなくて、今年やっと見れると思ったら何故か首都圏だけの期間限定公開で、でもそれが異例のヒットを飛ばしたお陰でめでたく大阪でも見れることになって、というね。そんないきさつから相当期待値は高かったんですが、いや???面白かった!!

カ:面白かった!俺ね、超能力モノって、あんまり良い印象がなくてね。大体、一辺倒になりがちやん。だからどれも似たり寄ったりの展開で、結局、CGだけで押し切りましたって感じなってまうやん。でも、これは徹底それを外してたね。細部に至るまで考え尽くされてる。『21グラム』(http://www.youtube.com/watch?v=o8ZFwBBsjUs)観た時と同じ感覚に陥った。監督の手のひらで踊らされてる感じ。

須:どういう話かと言いますと、アメリカのまさにナードな高校生がある日超能力を手に入れて、最初は無邪気にイタズラしたりするだけだったのに次第にそのパワーの矛先がアカン方向に向いていって…というもの。これをいわゆるPOV方式(※正確には『ファウンド・フッテージ方式(発見された映像)』って言うらしいです)で手持ちカメラで撮ってるのがポイントでして。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(http://www.youtube.com/watch?v=thgxGmarMgc)とか『クローバーフィールド』(http://www.youtube.com/watch?v=s-8ISAzYvns)とかみたいなアレね。

カ:でも、あの二作とは決定的に違う。それが『クロニクル』がもたらした革命よね。それが名付けて「サイコキネシスカメラ」!まさか念力でカメラを浮かして自由なアングル得るとか誰が考えつくんやっていう。ほんま衝撃ですよ。

須:その手があったかって感じですね(笑)あと最近のこの手の作品でできたルールとして「撮影者が複数いれば視点も切り替わる」ってのがあって、この作品のクライマックスではそれがすごい効果的ですね。あんま詳しくは言わないですが、iPhoneがブワ?ってなって(笑)

カ:iPhoneがブワ?は映画史に残る名シールですよ(笑)しかし、この作品、ちょっと突っ込んで話すとすぐネタバレになるからかなり言葉に気を遣うよね。あ、一応、EIGA・BUの鉄の掟で「ネタバレ禁止」ってのがあるので、読者の皆さんご安心を。『クロニクル』観ながらまるで『キャリー』(http://www.youtube.com/watch?v=sG2UTWfVxbI)やんって思ってんけど、監督がドンピシャで好きな作品で挙げてた。ナードと超能力って言ったら外されへん作品やもんね。今日、ナードって言葉が度々出てくるからナードマグネットの宣伝効果スゲえな(笑)

須:もともとこういう青春映画が大好きなのもあって付けたバンド名ですからね(笑) 『キャリー』もそうですけど、大友克洋からの影響もでかいんですよね。主人公のパワーがどんどん暴走していくくだりはまさに『AKIRA』(http://www.youtube.com/watch?v=zIgFpdix8PI)の鉄雄ですし。ティーンエイジャーの鬱屈や絶望感が爆発するビジュアルイメージには震え上がりました。

カ:あと同じ大友作品の『童夢』を実写で観せられたようやったね。これって勿論、アメリカでもヒットしてんよね?

須:大ヒットっす!中国とかでも初登場1位だったとか。だから日本公開ほんと遅すぎなんすよね。しかも首都圏限定とか、アホちゃうかと!僕ガマンできずにイギリス版のブルーレイ輸入しましたからね(笑)

カ:なんで日本版そんな公開遅かってんやろうね?しかも、首都圏だけって…内容的にヒットしそうやのにね。前半はウキウキして、後半でドーンとやられる感じ。この落差がたまらん!

須:そうなんですよ、もっと「超能力イェーイ!」みたいな爽快な内容かと思ってたんですが、かなりズシッと来ました。主人公の叫びにただただ号泣でした…。しかしこの主人公を演じたデイン・デハーン君はイイ顔してますよねー!他の作品だと『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ』(http://www.youtube.com/watch?v=PVMASAsKFb4)でもすごく印象的でした。鬱屈した十代の役がすごい似合う!

カ:イケメンやのに完全に童貞な感じを出せるのが凄い。ほんま、結末に至る流れは胸に突き刺さる、抉られる。細部に至ってよく気配りが出来たかなりの良作やったね。自由を手に入れた者が捕われる不自由さを描きながら、それを映すのは不自由さの中に自由を手に入れたカメラ。これは本当に上手い。無意識に観客は引き込まれてる。

須:この手のPOVモノはどうしてもアイデア一発で押し切るようなのが多い印象ですが、その点本作は物語のエモーションと映像がリンクしてるというか、手法に必然性があるなあと思いましたね。青春映画の新たな傑作が生まれたんじゃないかと思います。ただカリスマさん、ここでひとつ残念なお知らせがありまして、このコラムがアップされる頃には上映が終わってます!笑

カ:ば、ばかな!?まぁ本国では2012年の作品やもんね。俺が観に行った時も1000円で観れたからね。ちなみに須田くんが海外版のブルーレイを既に購入したとの噂を耳にしましたが(笑)

須:そうなんですよー。というのも最近海外のブルーレイには日本語字幕がついてるパターンが多くて、クロニクルもイギリス版のはそういう仕様だっていう情報を得たので注文しました。同じような経緯で以前『Project X』(http://www.youtube.com/watch?v=FvbMfHj63_c)という映画のBDを取り寄せたことがあるんですが、こちらもPOVで撮られた青春モノという点では共通しています。『スーパーバッド』(http://www.youtube.com/watch?v=-Z07b-hLywE)と『ハングオーバー』(http://www.youtube.com/watch?v=wD15AXf-Nno)を足して2で割ったお話をなぜかドキュメンタリー風に撮ってるという、なんとも変わった映画でした。

カ:あ!日本語字幕ついてるんや。ゲームでは割とよくある話やけど、映画のブルーレイでもそうなってるとは知らんかった。つーか、『スーパーバッド』と『ハングオーバー』足して2で割るとか、だいぶ観たいねんけど(笑)ちなみに、先日、ドラムの結婚式でリアルハングオーバーになりました。起きたらスーツに靴はいたままでベッドの布団の上で寝てた(笑)しかし、そうやって海外版が入ってくると、どんどん日本版は売れなくなるなぁ。そういう意味では、最近観に行った『モテキ』(http://www.youtube.com/watch?v=fV0zyJQU_uc)の大根仁監督の『恋の渦』(http://www.youtube.com/watch?v=SR5jBIrAYVQ)は最初から絶対にDVDにはなりませんよってアナウンスしてて、新しい映画の売り出し方やなぁと感心しました。

須:えっ!『恋の渦』ってソフト化されないんだ…どっかで再上映しないかな…。一昨年くらいに話題になった『サウダーヂ』(http://www.youtube.com/watch?v=9dlaZcbfrqA)もそういうスタンスでしたね。どっちも見逃してるんで、ほとぼりが冷めた頃にシレッとソフト化してほしいなあ(笑) というわけで『クロニクル』見逃したけどコレ読んで興味持ったって方はぜひ僕にご一報ください。ブルーレイお貸しします。

カ:おぉ!TSUTAYAならぬSUDAYA誕生の瞬間やね(笑)『恋の渦』は絶対DVD化しないみたいよ。実際、そのプロモーションは成功してると思うし、まぁ、興行収入的には制作費とトントンぐらやと思うけど、インパクトがあるよね。Twitterで大根監督が毎日の動員をTweetしたりしたのも功を奏したと思う。何より次に繋がる作り方やわ、あれは。比べて『クロニクル』はもっとアナログな伝播の仕方やったよね。噂がウワサを呼んでっていう昔ながらな感じがした。

須:日本公開が遅れたり限定公開みたいな消極的なことになってたのって、おそらく単に「有名なスターが出てないから」とか、そういうしょうもない理由なんですよ。さっき挙がった『ハングオーバー』なんかも最初は同じような理由で公開予定無かったらしいですし。でも内容が面白ければちゃんと話題になるし、口コミでどんどん広がるんですよね。売る側が変な先入観持っちゃって作品自体のパワーを殺してる、みたいな事は映画に限らず最近多い気がします。というわけで当コラムでは引き続き積極的にオモロイもんにはオモロイ!と言っていきたいものですね!

カ:そや!言っていこう!ちなみに口コミと言えば『キック・アス』(http://www.youtube.com/watch?v=0DUfQqR-Gk4)もそうよね!しかも、あれは日本広報担当の宣伝ダディさんの熱意が凄かった!俺、その時結核で入院しててんけど、早く治して観に行きたい!ってなったもん。あらゆることに当てはまるんやけど、どれだけ本気か?ってのが相手伝わるかどうかが重要よな。

須:そうなんす。誰もが評論家気取りになっちゃう今の世の中だからこそ、熱意が一番大事!来月以降も熱苦しくやっていきましょう!というわけで今月はこの辺で!

カ:ではでは!そして、今月も、俺の所為で入稿ギリギリですまん、須田くん!!!ではまた来月!!ブレイブ・イン!!!


プロフィール 如何の通り

カリスマ: 本名不肖、牙の勇者の異名を持つキョウリュウレッド。
地球と大阪市北区の平和を守る傍らハンバーグオムレツというジャンクフードパンクバンドのボーカルとしても活動している。
EIGA・BUの「観る」担当。
HP:http://omelette.sekaibi.com

須田亮太: 顔出しNGというわけではございません。
ナードマグネットというバンドのギター&ボーカル。パワーポップという不遇のジャンルを今一度普及させるべく、大阪を中心に活動中。アイドルも好き。
EIGA・BUの「見る」担当。
HP:http://nerd-magnet.com/

ナードマグネットのインタビューはこちら


【編集部より】
YouTubeの埋め込みがとても多いと一部で固まってしまうようなので、今回からリンクのみになっています。