[コラム]ナードマグネット・須田とハンバーグオムレツ・カリスマのEIGA・BU第12回〜今更『アナと雪の女王』編〜(2014/06)


カ:レリゴーレリゴー!どうも、関西のレリゴー兄さんことカリスマです!!

須:まったく意味がわからない!こんにちわーナードマグネットの須田です!

カ:え?須田くん知らないの?レリゴーは今や世界共通のマジカルワードだよ。街中で子ども達がアッパーな目付きでうわ言の様に「レリゴーレリゴー」繰り返してるよ。
これも全てネズミの国から送られてきた超弩級の新人レリゴー姐さんの魔法のせいさ。
レリゴーレリゴー

須:うるせえ!(笑) Let It Goね!いや知ってますけどね!「関西のレリゴー兄さん」ってなんだよ!いやーほんと凄い人気ですよね。ナードマグネットの前川嬢も最近やたら「ありのー!ままのー!」言うてますからね。でも映画は見てないからそこしか知らないの(笑)

カ:世界的に観ても日本が特に人気があるみたいやね。公開から結構経つのにまだシネコンでは一日に五回を二つのスクリーンで回してるもんね。正にドル箱ですよ。

須:当コラムを毎回読んでくださってる方は覚えてるかもしれませんが、2ヶ月前の『LEGO(R)ムービー』(http://youtu.be/_zxEGYO4XI4)の回で僕が「アナ雪も傑作ですけど、あっちはどうせヒットしてロングラン上映だから先にLEGO見に行ってください皆さん!」みたいなことを言ってたんですけど、そんときの予想を遥かに上回る大ヒットですね。というわけで今回のEIGA・BUは、今さらながら『アナと雪の女王』(http://youtu.be/fO2IfRohYaw)です!!

カ:はい。圧倒的な人気に我らも屈服させられた格好になりました(笑)こんだけあちこちで取り上げられてると、まるでEIGA・BUが取り残されたみたいな(笑)
それで俺らもレリゴーしたわけです。結局、俺は2回観に行ったんですけど、色々凄いわ、ディズニー。『塔の上のラプンツェル』(http://youtu.be/IRt3zcz03aA)の時も思いましたが、構造が特殊やのにそう思わせない。アニメというよりゲームに近い作り。

須:おお、その辺はゲーム門外漢としては詳しく聞きたいっす。僕の感想は2ヶ月前の鑑賞記憶を少しずつ呼び戻してから言っていきますんで(笑)

カ:具体例を出すと、スーパーマリオ。目の前に穴があってある程度助走しないと落ちる。だから手前に距離がある直線がある。つまり、予め必要とする事になる行動と結果があって其れにあわせて地形が作られてる。どの映画でもそんな事はやってる様に見えるんやけど、今作やラプンツェルが凄いのは観客に気付かせないのよ。須田くんの記憶の糸を辿って欲しいねんけど、噴水がある城の正面広場わかる?

須:あーわかります、結構何回も出てくるとこですよね。エルサが凍らせちゃう噴水の。

カ:そう。あれとか一番わかりやすねんけど、話の随所で現れて、その都度シーンに必要なギミックが動く。まあそれだけやったら割とありそうなもんやねんけど。
あの世界の大体の場所って1〜2シーンであの広場行けるようになってるんよね。ここが凄い。これはラプンツェルも一緒で、「え?ここに繋がってるの?」という不思議な感覚。マリオカートで言うショートカットですよ。

須:ほー、そこはあんま意識して見てなかったっすね…もっかい確認したくなってきた。要は空間の構築が緻密ってことなんすかね?だって全部作るんですもんね。フルCGアニメだからロケするわけにはいかないし(笑)

カ:ストーリーに合わせて空間、地図上の繋がりを構築して、極めて早い速度でそれを展開させると多少の矛盾が出てもまるで感じない。例えば、姉ちゃんはずっーと部屋から出てないねんけど、トイレもお風呂も見当たらないけどそんな些細なことには観客は誰も気付かせない(笑)

須:ああ、緻密って言うかむしろ荒いのか(笑) でもそんなツッコミどころを映像と音楽の圧倒的なテンションでぶっ飛ばしてるって感じでしょうか。

カ:そやねん!2回目の時は日曜日の朝に行ってんけど、両サイドのちびっ子が大合唱(笑)知ちゃんも然りやけど、観てなくても皆が知ってるこの認知度!!
後、俺がこの映画好きなのは、男の扱い方。ゴミムシ以下インポ野郎ばかりですよ、アナ雪の男達は、ほんまに最高です(笑)

須:あの王子の胡散臭さと言ったら!ディズニーの前々作の『プリンセスと魔法のキス』(http://youtu.be/lghxu0HauaI)もすげえチャラい王子様が出てきてましたし。ここ数年のディズニー作品って、今までディズニーが築き上げてきた「王道」とか「お約束」をいかに相対化して新しいメッセージを伝えるか、っていう事に力入れてると思います。今作もいわゆるお姫様モノのお約束を意図的にハズしにかかってるんですが、そこにすごく現代的で真っ当なメッセージを感じました。

カ:公開が間近に控える『マレフィセント』(http://youtu.be/GTu5piG9Leg)も、その辺りに切り込んでる意欲作かと期待してます。そんでね、今回は吹き替えのキャスティングが秀逸やってん。俺は俳優が声優やるのは反対やねんけど、ラプンツェルのしょこたん、今回の神田AND松ペアは文句のつけようがない。
須田くんは字幕で観たんよね?

須:字幕でした!吹替めちゃくちゃ評判良いっすよねー。確かにプロ声優ではないですが、あくまでも作品のクオリティありきのキャスティングなんだろうなーと思います。だって松たか子もサヤカも別にタレントとして「今が旬!」ってわけではないじゃないですか、失礼ですけど(笑) 吹替も見なきゃなあ。

カ:旬ではないよね(笑)でも観た方がいいよ。ほんとにびっくりするようなキャスティング。なんか近年のジブリと根本的に違う気がするのは俺だけ?

須:ジブリはもう殆ど「アテ描き」ですからね(笑) 『かぐや姫の物語』(http://youtu.be/af0hwlKjgpE)の伊集院さんとか一点の曇りもなく伊集院さんでした。
で、ちょっと話戻すんですが、僕はアナ雪で最も画期的だなと思ったポイントは、クライマックスの展開とエンディングなんですね。その辺語りたいんすけど、もうこんだけヒットしてるから多少ネタバレして良いですかね?(笑)

カ:初のネタバレ!!確かに多少であれば弊害は無いかも知れない。つーか、みんな観に行ってるから大丈夫(笑)で、その画期的なシーンとは?

須:や、出来る限りの配慮はします(笑) さっき言った「従来のお約束」に沿っていった場合、クライマックスは「王子様がキスして問題解決!」で、「災いをもたらした大きな力は綺麗さっぱり消え去ってハッピーエンド!」という風になりますよね?その2点を実際はどうしたか、ってとこなんです。そこに意識的になることで、「今までのプリンセスストーリーでは救われなかった人たち」に今回ディズニーは向き合おうとしたんじゃないかなと思いました。さっき名前出した『プリンセスと魔法のキス』あたりからその傾向はあったんですが。そういう視点って、今まではドリームワークスが「ディズニーへのアンチ」として提示してきてたんですけどね。『シュレック』一作目(http://youtu.be/szn0t4iQPCw)のオチなんかモロですよね。あれから10年くらい経ってようやく本家がそういう価値観を提示した!これはデカい!っていうのが僕の感想です。

カ:おぉ!!批評家っぽいコメント!!そう、これはディズニーの中でブレイクスルー出来る新しいクリエイターが続々生まれてきている証拠やと思う。芸術たるもの未来への継承と革新が無いと衰退の一途を辿るからね。ここら辺は海外の強いところで、日本はベンチャーが上手くいかないのもしかりやけど、新しい物に対する畏怖の念が国民性に深く食い込んでるところがある。だから、今までに無い物が出て来ると先ず排斥しようする思考が働くから、阻害されてしまうんよな。ジブリとか宮崎発では無い革新的な作品をそろそろ出して欲しいですね。
そして、既にこのコラムを書いているこの段階で締め切り日なんです!やばい!!(笑)

須:締め切りに関してはFireloopの偉い人に既に詫びを入れたので…(笑)

カ:最後に言わせて、須田くんがあげてたシーンが俺は今作でディズニーからの同性愛への踏み込んだ描写の様にも見えた。多様化する現代でエンターテイメントとマイノリティの融合芸術を示す試金石的な作品では無いかと捉えております。

須:そうそう、そうなんす。さっき言った「プリンセスストーリーでは救われなかった人たち」ってのは要はLGBT含めたマイノリティの方々のことでして、隠し味程度にせよ、そこに向き合った作品がこれだけのヒットになってるってのは希望だなーと思うんです。アナ雪に限らず、ここ1〜2年くらいは割とメジャーな規模で「差別」というものにしっかり向き合った映画が沢山作られてると思います。しかもどれもとても面白い。この辺についてはまたあらためて色々と取り上げたいなーと思ってます。

カ:うむ!ガンガン取り上げていこう!映画界が愛を持った進化続けて行く事を我々EIGA・BUは応援する構えですよ。では、今月はこの辺でお別れしましょうか。では、また来月お会いしましょう!!ブレイブイン!!

須:カリスマさんはちょっと忙しすぎなので身体休めてください!(笑)ではまた来月!



プロフィール 如何の通り

カリスマ: 本名不肖、牙の勇者の異名を持つキョウリュウレッド。
地球と大阪市北区の平和を守る傍らハンバーグオムレツというジャンクフードパンクバンドのボーカルとしても活動している。
EIGA・BUの「観る」担当。
HP:http://omelette.sekaibi.com

須田亮太: 顔出しNGというわけではございません。
ナードマグネットというバンドのギター&ボーカル。パワーポップという不遇のジャンルを今一度普及させるべく、大阪を中心に活動中。アイドルも好き。
EIGA・BUの「見る」担当。
HP:http://nerd-magnet.com/

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