[コラム]ナードマグネット・須田とハンバーグオムレツ・カリスマのEIGA・BU第21回

[コラム]ナードマグネット・須田とハンバーグオムレツ・カリスマのEIGA・BU第21回(2015/03)


カ:どーも!アメリカのドラマ『ARROW』に激ハマりしてBlu-rayBOX買っちゃいました!お陰で映画全然観れてません(笑)!ほんま、ARROW面白すぎ!!ハンバーグオムレツのカリスマです!

須:ちょす!単純にめちゃくちゃ忙しくて映画全然見れてません!もういやだ!!ナードマグネット須田です!!

カ:いやはや、そんな多忙の合間を縫って、先日のバンドマンだらけの温泉旅行に行ってきたんですよね、俺ら。あれは楽しかったね!内臓にダメージうけたけど(笑)

須:「ウノで負けたら多量のワサビを乗せたおかきを食べる」っていうどうしようもない遊びでね。カリスマさん結局4回くらい負けてましたね。幹事ほんとお疲れさまでした!

カ:罰ゲームを率先してやるのも幹事の仕事やから(笑)ただ、あれのお陰でワサビが苦手になった、、怖い、、ワサビ、、。

須:争いによって心に深い傷を負ってしまいましたね…そう、今回取り上げる映画の主人公のように…とムチャクチャ強引な繋げ方で今月のEIGA・BUスタートでございます!

カ:今月の作品は今、アカデミー賞にノミネートされたりで話題の『アメリカン・スナイパー』です!



で、俺、観る前は「アメスナ」って略して呼んでてんけど、観終わった今はそんな呼び方出来ません。めちゃ重いよ。『ジャージー・ボーイズ』とどんだけ落差あんねん!



須:クリント・イーストウッドの監督最新作ですね。前作『ジャージー・ボーイズ』はフォー・シーンズンズというバンドの軌跡を描いた音楽映画でしたが、間髪入れずに発表された本作はイラク戦争で160人を射殺した実在のスナイパーが主人公という。どちらも実話ベースの物語ですが、見終わった後の後味がもう、真逆(笑)

カ:クリントの叔父貴の守備範囲の広さには驚かされるばかり!アカデミー賞を取る取らん以前にアメリカではこの作品めちゃヒットしてるみたい。なんせ米軍きっての伝説の男やもんね。ただ、余りにタイムリーな話なので、現在進行中の裁判に影響が出るってとこが問題視されてるって噂も聞いた。

須:その「米軍きっての伝説の男」ってところがひとつ問題なんすけど、それは後で話しますね。裁判への影響ってのは具体的にはどういうことでしょう?

カ:さっき須田くんが言ってた通り実話ベースやねんけど、作中でも描かれるある事件の裁判が現在進行中らしいのよ。で、むこうは裁判員裁判やからこの映画みたら公平な判断出来なくなるよねって話。

須:なるほど。まあ報道もされてることなのでネタバレもクソもないと思いますし言っちゃいますが、この主人公のクリス・カイルさんは2013年にとある人物に殺されてしまったんですよね。その事件についての裁判ですね。確かにこんだけリアルタイムだと、どうしても「現実」と、そこから切り取られた「物語」は混同してしまいかねないですね。

カ:そやねんな。そもそもあの映画は一体いつから制作しだしてんやろうって気になった。本来は、「今、彼は軍を退役し、PTSDに悩む兵士のカウンセラーになっている」っていうモノローグが流れる予定やったんかなってね。

須:インタビュー読んだんですが、イーストウッドが監督するって決まったあとで事件が起こってしまって、脚本を書き換えたみたいですよ。けど僕は、この作品が世に出た意義は大きいと思うんすよ。実際の裁判の状況は知らないですけど、やっぱラストの映像とか見る限りではこのカイルさんってアメリカ人、主に保守的な層の人たちですけど、にとっては「我が国の英雄!」「伝説の男!」って感じなわけですよね。でもこの映画、そこメインの描き方はしていない。

カ:してないね。観てて、職業として軍人がある国の日常を垣間見ることが出来たというか、戦争行って、人殺して、帰ってきて、家族と過ごして、また戦争行って、人殺して、って繰り返すあの感じは日本ではあり得ないから理解出来ないというか。でも、殆どのアメリカ国民はそれに違和感を覚えてないからさ。それってアメリカって国が抱える病巣の一つやと。だから、カイルさんの弟さんが任務から帰ってきた時に一言は本質をついてた。

須:カイルさんは結局4回イラクに派遣されたわけですが、その「人殺して、帰ってきて」ってのを交互に見せるのがミソですよね。みんなが「英雄や!伝説や!」言うてる男が実際どういう事をやってたのか、そして、それによって彼自身はどうなってしまったのか。

カ:女だろうが子どもだろうが米軍に仇をなすものは容赦無く殺すっていうスタンスを取ってたみたいやし。味方からしたら「伝説」、でも敵からしたら完全に「悪魔」。それって戦場が日常からかけ離れてるかの象徴やし、如何に狂気に満ちているのかの証明やと思う。伝説とも悪魔とも呼ばれることなんて無いからね。

須:インタビューによると「爆弾を持って攻撃しようとしてくる子供を狙撃する」って描写は、この映画の元となったカイルさんの手記には無かったらしいです。実際あったことだけど、悲惨すぎて書けなかったと。でもイーストウッド監督は映画版であえてそのシーンを入れた。この点だけでも監督の意図というかスタンスは明らかですよね。

カ:ただ米国の英雄を讃えるだけの映画では無くて、任務とは言え子どもを撃ってまともな精神状態なんて保てるもんじゃない。だから、当事者のカイルさんがPTSDに苦しむ姿もきちんも描かれてる。実際、映画に登場してたカイルさんの友人も帰ってきてからPTSDで自殺された方が多かったみたいやし。

須:その辺のPTSD描写のシンドい感じも含めて「あー、やっぱこれはハッキリと反戦映画なんだな」と僕は思ったんですが、アメリカでは「こんな160人も殺したような男をヒーローとして描くべきじゃない!」とか「この映画はイラク戦争を肯定的に描いている!」とかっていう批判の声も上がってるようで…なんでなんすかね?「クリス・カイルについての映画を撮る」って事がもうそういう事になっちゃうんでしょうか。向こうの温度感や原作を知らないので何とも言えませんが…。

カ:決して「イラク戦争」を肯定をしているわけでは無いと思うけど、この映画ヒットしてるからよけいに色んな意見が出てくるんだろうね。映画観てたら、「で?何を持ってこの戦争は終わるの?つーか、もはやなんのための戦争?」って疑問がムクムクと沸いてくる。戦争なんてどれもこれもクソッタレですけど、アメリカはダラダラ何年も一体なにやってんだろうね。って、いつに無く真面目な流れやん!今回!

須:題材が題材だけにチョケにくいですよね(笑) ただこれ読んでる人で「なんか難しそうな映画だな?」と思った方がいれば、そんなことはない!映画としてちゃんと面白いですよ!とは言いたいです。

カ:語弊があるかもしれないけど、かなり重いテーマを取り上げてるのにキチンとエンターテイメントしてるんよな。それがクリントイーストウッドという監督がコンスタントに作品を作り続けられる所以かと。単なる伝記映画で終わらないというか、きっちり物語として緩急をつけてるのは流石の一言ですよ。

須:そうなんですよ!冒頭でいきなり緊張感マックスまで持って行ってからあーいう風に繋いだり、その後も主人公の人生を手際よく見せていって、ちゃんと一人の人間として共感もできるように描いてたり、人間ドラマとしても引き込まれました。

カ:伝記映画としてなぞったら「伝説の英雄の功績と悲劇的な死を悼む作品」になり得た可能性も十二分にあったと思うし、多分その方が容易に作れたんじゃないかと。でもそれだと凡作で終わってたやろうな。戦争映画としても、人間ドラマとしても、今作はかなりの傑作だと思う。ところで、今回全く俳優さんに触れて無いよな(笑)

須:ほんまや!僕ブラッドリー・クーパー好きなんですよ。『ハングオーバー!』のアホな兄ちゃん、良い俳優になりましたよねえ(笑) (※久しぶりに見たけどこの頃ガリガリだなあ。)



カ:以前取り上げた『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』にも宇宙一凶暴なアライグマの声優として参加してるしね(笑)



ほんと最近は超がつくほどの売れっ子ですよ。そして、須田くんが大好きな『世界にひとつのプレイブック』にも出てる。



須:そうです!あと『アメリカン・ハッスル』とか。



割とコメディタッチの作品が多かったので、今回かなりのシリアス路線でどうかなーと思ってましたが、バッチリでしたね。ていうか本人にそっくり!笑

カ:めちゃくちゃ似てる!なりきり度合い半端無い(笑)それが余計にこの作品への没入感を高めてくれてる。気になる人はウィキペディア等で両人を比べてみて下さい(笑)

須:その見事ななりきりっぷりでアカデミー賞の主演男優賞にもノミネートされてましたが、惜しくも受賞は逃しましたね。んで受賞したのは『博士と彼女のセオリー』でスティーブン・ホーキングを演じたエディ・レッドメイン。なりきり対決で負けた(笑)



カ:残念!(笑)トレーラー観たけどあちらもそりゃもう完全にホーキング博士やったからね(笑)なんにせよブラッドリー・クーパーの過去作に遡って頂ければ彼の演技の幅広さを堪能して頂けるかと。さて、今回もそろそろお別れの時が近づいて参りました。

須:はい、今回の『アメリカン・スナイパー』は、アカデミー賞メインどころは外しちゃいましたが、「音響編集賞」を受賞していますので、ぜひとも映画館の爆音で体感してみてください!

カ:だね!これは、ほんと、まさに今、観ておくべき作品だと思うので皆さん、映画館へどうぞ。そして、これからアカデミー賞絡みの作品がどんどん上映されると思うのでそっちも要チェックや!では、また次回!ブレイブ・イン!



プロフィール 如何の通り

カリスマ: 本名不肖、牙の勇者の異名を持つキョウリュウレッド。
地球と大阪市北区の平和を守る傍らハンバーグオムレツというジャンクフードパンクバンドのボーカルとしても活動している。
EIGA・BUの「観る」担当。
HP:http://omelette.sekaibi.com

須田亮太: 顔出しNGというわけではございません。
ナードマグネットというバンドのギター&ボーカル。パワーポップという不遇のジャンルを今一度普及させるべく、大阪を中心に活動中。アイドルも好き。
EIGA・BUの「見る」担当。
HP:http://nerd-magnet.com/

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