[コラム]「ナードマグネット・須田とハンバーグオムレツ・カリスマのEIGA・BU第4回〜許されざる者の巻」


カ:お早う御座います。ハンバーグオムレツの唄担当、カリスマで候。

須:ナードマグネットの須田で早漏!あれっ?

カ:所謂、下の?で御座るな。須田殿も腕を上げられたで遅漏。あれ?

須:遅漏に憧れますわ〜。とまあ、僕の性の悩みを打ち明けたところで、EIGA・BU第4回初めたいと思います!カリスマさんなんでそんなサムライ口調なんですか?

カ:え??全く気付いてなかったよ。あちゃーまた無意識に出てたわ、俺の中の侍。っことで今回はあのクリントイーストウッドの伝説的西部劇作品のリメイク『許されざる者』(http://www.youtube.com/watch?v=O3hHMSqHgpw)です。



須:すぐ影響されるんだから!李相日監督、渡辺謙主演による時代劇ですね。オリジナル版と同時期の、明治時代初期の北海道が舞台になってます。

カ:オリジナル版(http://www.youtube.com/watch?v=XDAXGILEdro)は言わずと知れた巨匠中の巨匠ことクリントイースト神ウッド監督作品。西部劇のヒーローだった監督が自ら西部劇人生に終止符をうつべく撮った渾身の名作。かつて超人だった男の命の物語。この歴史的名作をリメイクなんて出来るのか?って思ってました。



須: 西部劇だからこそ活きてた設定とか、日本でどうやってやるんだ?という懸念がありましたが、その辺は上手くクリアしてた印象ですねー。アイヌの絡め方とかも、ドラマに深みを与えてて上手いなーと思いました。

カ:それと、特筆すべきは画のでかさ。正直、オリジナルよりでかく撮れていた気がする。しかも、全編ガチの北海道ロケ!『ラストサムライ』(http://www.youtube.com/watch?v=r5BeJ7j1Fj4)で観られたような、日本に存在しないシダ植物は一切登場しない(笑)



須:ラストサムライはファンタジーですからね(笑) 確かに予想以上にスケール感ありました!日本版のキャストについてはどうでしたか?

カ:良いですね。ここに関してはオリジナルと演技の質が違うので比べにくいですが、どちらかというとリメイク版の方が泥臭い男臭い演技がてんこ盛りだった様に思います。個人的にはあの個性派の中でも特に際立っていたのは佐藤浩市。

須:あ?、佐藤浩市は良くも悪くもって感じでした。ちょっと「恐ろしくて、嫌な奴」感が終始出すぎてるかなーと。オリジナル版のジーン・ハックマンは恐ろしい中にどこかチャーミングなところもあったと思うんす。日曜大工の場面とかね。

カ:チャーミングなとこは一切無かったよね。でもリアルに圧倒的暴力と恐怖による統治をするならあんな感じになるかなってね。お陰で物語が終盤になるにつれ、観客の中で抑圧された憎悪が膨れ上がるわけで。まさに西部劇の鉄板の悪役やと。須田くんは誰が気になりました?

須:柳楽くんが良かったです!彼と、あと國村隼のキャラ設定がおもしろいと思いました。基本的には意外なほどオリジナル版に忠実に話が進むので、キッドとイングリッシュ・ボブはどういう風に描くんだろうと思いながら見てたんです。なるほどなー!と。

カ:忠実やったね。小説家役の滝藤賢一さんも好きなんよね。あの人、最近色々なとこで見かけるけど凄く良い演技をしはる。しかし、今回は役者の話にいくなんて随分、映画評論っぽい流れになってきてるんじゃないか(笑)

須:前回はエルボーロケット言うてただけでしたからね!この手のリメイクものって、やっぱどうしてもオリジナルとの比較論ばっかになっちゃうんですけど、まっさらの状態で見た人の意見も聞いてみたいっすよね。

カ:映画好きな人は結構観てると思うからね。逆にまっさらな人は観に行きにくい気がする、テーマ暗いし(笑)とりあえず、オリジナルを観てない友達を捕まえて強引に観に行ってもらって感想を聞いてみるとか試したい。手始めにメンバーやな(笑)でも、割りと構えてる人に伝えておきたいんやけど、これは完全にヒーロー映画なんやわ。

須:ん〜、勧善懲悪のお話ではないので、ヒーロー映画って言うと若干語弊があるかもですが、善悪とは?正義とは?みたいな問いかけをしてくるあたりは『ダークナイト』あたりにも通ずるところではありますね。そういう意味では最近の日本の、こんぐらいでかい規模の作品では珍しく、暴力がちゃんと痛ましく描けてるのが偉いと思いました。

カ:あれ?ヒーロー映画って言いすぎ?(笑)俺の中で最終回以降のヒーローを描いてる感じなんやけどね。まあまあ、でかい規模の映画の中でもこの監督の予算の使い方が上手いって思った。規模は違ったりするけど、黒澤明監督の使い方と似てる印象。ちゃんと必要なとこで必要な金をかけてるというか。ガッチャマンスーツに2000万円もかけて大ゴケした某ヒーロー映画とエラい違いやわ。あ、ガッチャマンって言ってもうた(笑)

須:ガッチャマンと比べるのはさすがに…(笑) 画作りもですし、役者の魅力を引き出すのもうまい監督さんなんだなーと思います。『フラガール』(http://www.youtube.com/watch?v=Tt8ncP4dPJY)も『悪人』(http://www.youtube.com/watch?v=lw-o2Pcivpk)も好きな作品です。





カ:俺は『スクラップ・ヘブン』(http://www.nicotwitter.com/watch/sm9718821)も好き。メンツだけ観てたらわけわからんオナニームービーで終わりそうな感じやのに、しっかり話が出来てた印象やったから、須田くんの言うとおり、やはり役者の魅力を引き出す能力が高いんやと思う。役者の雰囲気も生かしつつ、それに振り回されないバランス感覚が素晴らしい。

須:登場人物に対してちゃんと愛情持ってる人なんだと思います。『フラガール』におけるしずちゃんの描き方とか。語り口がウェットになりがちなのは好き嫌い別れるとこかもしれないですが、まあ日本映画ってほとんどそうですし(笑) ベタなものをしっかり撮れるってのは大切ですよね。

カ:大切やわ。ベタって本当に難しくて、それは予算とか技量とかが複合的に関わってくると思うんやけど、大体が奇をてらって外して逃げてしまいがち。これは、俺らの音楽にも通ずる考え方やと思う。ポップである、王道である、って事の難しさと大切さを忘れずに取り組める人が後世まで残る作品を作る事が出来るんだと思うね。勿論、ベタでは無いものの中にも良いものは沢山あって、でも後々考えれば、それは新たなるベタを作り出してたりするのよな。

須:ベタってつまり伝統ってことですし。歴史や伝統をしっかり受け継いでいく人と、それらを踏まえたうえでぶっ壊せる人が好きですね。音楽でもそう。ほんと今回かなり真面目なトーンになってきてますね(笑) そろそろ締めましょうか!

カ:そやね。いつも内容がアホ過ぎた反動やね、これは(笑)いや、しかし、『許されざる者』は凄い挑戦的な作品でした。俺らも常に挑戦して行きたいですね!どうだ!この真面目なコメント!!

須:しかし果たして来月はどうなることやら!あ、最後にひとつだけ。このリメイク版で興味持った人はぜひオリジナル版も、さらにはイーストウッド監督の近作、とくに『グラン・トリノ』(http://www.youtube.com/watch?v=p_LtBoOBLDk)は絶対見てほしいなーと思います。暴力と憎しみの連鎖にどうケジメつけるか?というお話なので。



カ:『グラン・トリノ』は俺からもオススメです!そして、須田くんに謝りたい!今月は俺のせいで入稿遅れてすみませんでした!今度、飲み代おごるわ?。では、皆様、また来月!!あばよ!!





プロフィール 如何の通り

カリスマ:
本名不肖、牙の勇者の異名を持つキョウリュウレッド。
地球と大阪市北区の平和を守る傍らハンバーグオムレツというジャンクフードパンクバンドのボーカルとしても活動している。
EIGA・BUの「観る」担当。
HP:http://omelette.sekaibi.com/

須田亮太:
顔出しNGというわけではございません。
ナードマグネットというバンドのギター&ボーカル。パワーポップという不遇のジャンルを今一度普及させるべく、大阪を中心に活動中。アイドルも好き。
EIGA・BUの「見る」担当。
HP:http://nerd-magnet.com/

ナードマグネットのインタビューはこちら