[コラム]ナードマグネット・須田とハンバーグオムレツ・カリスマのEIGA・BU第30回

[コラム]ナードマグネット・須田とハンバーグオムレツ・カリスマのEIGA・BU第30回(2016/02)


カ:どうも。最近のマイブームはあぶない刑事。そして、今年であぶない刑事がスタートした時の柴田恭兵と同じ年齢になります。ハンバーグオムレツのカリスマです!

須:実はあぶない刑事いっかいも見たことありません!非国民です!ナードマグネット須田ですー。

カ:す、須田はん!それほんまでっか?びっくりポンやわ!ハマはタカとユージの噂で持ちきりなんやで!と、言いつつ俺も観出したのはめちゃくちゃ最近、ここ1週間ぐらいの話です(笑)

須:めっちゃビギナーじゃないですか!(笑) しかしこのままでは今月のテーマが劇場版あぶ刑事になってしまうので阻止!!というわけで今月ご紹介するのはリドリー・スコット監督の最新作『オデッセイ』です!!


カ:ビギナーやけど魂はハマにあるで!行ったことないけど、横浜(笑)今作は「火星の人」ってweb小説が原作なんよね。須田くんは原作読んだ?

須:読んでないんですよー!web小説だったんですね!日本語訳でもすぐ読めるんですか??

カ:残念ながら日本語訳のweb小説版は出てないみたいやね。でも翻訳本はハヤカワから出てて『オデッセイ』の公式サイトから序盤の100Pほどをお試し版で無料ダウンロード出来るよ。

須:そうなんすね!調べてみます。火星に1人で取り残されてしまった宇宙飛行士のお話で、主人公をマット・デイモンが演じております。

カ:なんかキャッチコピーが「火星 一人ぼっち」やったから極限状態でのサバイバルな話かと思いきや、主人公が超楽天的やから「火星で一人暮らしはじめました」ぐらいのノリで物語が進む、という。しかも俺の中のリドリー・スコット監督のイメージを覆す音楽の使い方。てっきりもっと重厚な感じでくるんかと。

須:まさかの70年代ディスコヒットですからね(笑)ただ、僕は全編もっとこのノリで行ってほしかったですけどねー!深刻なシーンでは重厚な感じの音楽もちゃんと鳴ってるので、そっちはあんまいらないかな…って思っちゃいました。

カ:リドリーの叔父貴、我慢出来ず(笑)しかし、映画を観るまで火星で一人暮らしってさぞかし暇なんやろうなって思ってたら、地球以上にやることいっぱいで。作付けはせなあかんし、食料の在庫は管理せなあかんし、ソーラーパネルの掃除はせなあかんし、、、いやはや。どこに行っても生きるのは大変やなぁって思った(笑)

須:いや、そりゃまあダイレクトに命に関わりますもん(笑) でもほんと、序盤から中盤の、サヴァイヴするためにひとつひとつテキパキと作業を進めていくくだりは見てて楽しかったですよね。イモが育つだけでワクワクする映画ってなかなか無い(笑)

カ:大体、無人島ものの映画って大体狩りして大半の食料を獲得するけど、今作は生物いない火星やから狩りが出来ない。カロリーも高くて生産性の良いイモを育てるしかない(笑)あと劇中では掘り下げられてなかった気がするけど火星の砂だけだといくらウンコ混ぜても地中のバクテリアは増えないみたいね。地球の砂と火星の砂を混ぜてウンコ混ぜてしないとダメみたい。ほんとこの映画は勉強になります(笑)

須:うんこがちゃんとうんこだったので、食後すぐに見たせいもあってウッとなりました…。他にも地球と通信できるようになるまでのくだりとか、ほんと気の遠くなるような作業ばっかりですよね。それらをひとつひとつ、着実にこなしていくのがこの映画の大半を占めてます。宇宙が舞台なのにすごい地味な話(笑)

カ:しかも、まさかの火星側が輪をかけて地味っていう(笑)マットデイモンより地球の方が多数の人を巻き込んで盛り上がってた感じ。ちなみに小説版だとウンコは自分のしか使ってなかった。自分のウンコなら有害な菌がウンコの中にあっても抗体があるからって理由で。まぁ、しかし、EIGA・BU史上類を見ないぐらい地味な映画(笑)でも、凄く面白い!言うならばこの映画は火星DASH村ですよ。

須:DASH村っぽいって感想は僕もチラホラ見かけました(笑) 日本人にはおなじみの光景だったわけですな。小説版ってやっぱそういうディテールが映画より細かいんですか?

カ:細かいし、聴いてる音楽が違ったりする。途中でビートルズとか出てくるしね。映画でビートルズ使ったら『オデッセイ』×10ぐらいの制作費に跳ね上がるから無理やねんけど(笑)

須:あ、でも既存のポップソングがいっぱい出てくるのは原作にもあるんすね!映画ならではのアイデアだと思ってました。それこそ「宇宙でひとりぼっちで70年代のヒット曲だけが友だち」っていうと『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』

という素晴らしい作品があるので、「リドリー、パクったな!」とか思っちゃったんすけど、すいませんでした(笑)

カ:あ、リドリーは流行りに乗ってる感あります。ポップソングは原作ではあんまり出てこないのよ、船長のデータの殆どは往年のTVドラマやし(笑)

須:えっ、じゃあやっぱパクリだ!(笑) あとその辺に関して言うと、これは映画そのものの出来とは関係ないんですけど、やっぱ歌詞の日本語訳は全部字幕出すべきですよね。ちゃんと訳詞が出るのってドナ・サマーの「ホット・スタッフ」だけなんですが、あの歌詞も込みでギャグになってるじゃないですか。あんな感じで全部の曲にちゃんと意味があるんすよね。権利関係で難しいのはわかるけどそこは頑張ってくれよと。だって「There's a starman waiting in the sky」っすよ!タイミング的にも一番泣けるポイント!(※「スターマン」は最近亡くなってしまったデヴィッド・ボウイの曲)

カ:そやねん!観終わってから、英語喋れる友達に「歌詞とめちゃリンクしてたよな?」って言われて「え?そうなん?」ってなった(泣)字幕の加減ですげえ面白い演出やのに殆ど伝わってない現状は配給会社側でもっと問題視するべきよね。

須:その問題のせいで損してる作品いっぱいあると思うんですよねー。今後も気付いたら色々拾っていきたい所存です。

カ:あと、小説版との大きな違いは書かれた当時より火星について判明したことがあってそれを盛り込んでるってとこかな。小説版がweb小説だってのもあってネットの宇宙マニアな読者からの指摘も結構あったみたいでその辺りも調整してる感じ。でも、火星ではあんな規模の嵐は起きないとこや重力が地球の40%しかないとこは全く描かれてないねんけどね。

須: 確かに重力が軽い感じは全然なかったですね!だから余計にDASH村感が強いのかも(笑)

カ:「重力はあえて入れなかった」ってリドリーが言ってた。設定として必要だと思わなかったみたいな理由で。須田くんが言う通りDASH村感は増幅されてる(笑)アメリカ人も日本人も農業って好きな人多いよね。アメリカでリアルな農業のゲームがヒットしてたりするし。

須:ところで僕これ2Dで見ましたが、カリスマさんどっちでした?

カ:2Dやわ。個々に好みはあると思うねんけど俺はストーリーをしっかり把握したい場合なるべく2Dで観るようにしてるねん。今になって3Dのイモも観たかった欲が出てきてるけど(笑)

須:イモが飛び出してきてもなあ(笑) や、さっきも言いましたけど、これほんと基本的に地味なお話じゃないですか。3Dで見たら結構しんどいんじゃないか?って思ったんすよ。長いし。広大な土地の奥行き感みたいなのは出るんでしょうけど。3Dで面白いのってクライマックスだけじゃないのかしら…。

カ:全体の10%ぐらいしか派手なシーンが無いからね(笑)最近、4DXやら3Dやらとあちこちの映画館で観れる様になってきたけど、2Dの方が良さがでる映画も沢山ある。とか言うと「家で観たらええやん」って言われるけど、映画は映画館で観てほしい。イモの作付けから発芽、そして収穫を、ね。

須:もはやイモがメインになってる……。まあでもほんとに、どんな映画でもやっぱ映画館で見るのが一番楽しいっすよね。今この時代をリアルタイムで生きてる感がありますよ。DVDで旧作見てるとどうしても「追体験」って気がしてきちゃうので。

カ:最近は映画館をスルーしていきなりDVDになる作品もあるから、全部が全部って訳にはいかないけど、家のテレビだとわからないこだわりを映画館で体感してほしい。冒頭ではラガーマンの様に筋骨隆々なマットデイモンが火星のイモダイエットでどんどん痩せていく、あのさり気ない死の緊迫感はスクリーンじゃないと伝わらないもんやと思うし。

須:痩せて髭も生えてきて、「どんどん神みたいになってった」って知り合いも言うてました(笑) まあ地味地味言いましたけど、なーんにもない火星でポツンと佇む主人公のあの感じはでかい画面ならではです。スケール感はあります。なのでぜひ映画館で見てみてください。というか3Dで見た人の感想も聞きたいです。しんどくなかった?って(笑)

カ:しんどいって言ってもうてるから今回のコラム読んで3Dで観る人おらんやろうなぁ(笑)しかしながら恐らく今作はSFに新風を吹き込む作品になると思うのな。なんせこんな地味な題材でヒットしたSFは過去あっただろうか?いや、無い!やたら光る刀で斬り合わないし、やたら溶ける液を吐く頭長い奴らも出てこないし、やたらドレッドヘアーの戦闘種族も出てこない、それでも『オデッセイ』はびっくりするぐらい面白い!イモ好きなあなたも、イモ好きじゃないあなたも、必見です!

須:僕はいつまでも脳みそが小学生なので、光る刀で斬り合ってる方が正直好みではあるんですが(笑) まあでも、SFはヒットしないと散々言われてる中でこれだけ当たってるのは素敵っすね。新鮮な語り口がおもしろい、一見の価値ありな作品だと思います!ぜひ!

カ:あなたの中のイモ(フォース)を覚醒させろ!ではまた来月のEIGA・BUででお会いしましょう!




プロフィール 如何の通り

カリスマ: 本名不肖、牙の勇者の異名を持つキョウリュウレッド。
地球と大阪市北区の平和を守る傍らハンバーグオムレツというジャンクフードパンクバンドのボーカルとしても活動している。
EIGA・BUの「観る」担当。
HP:http://omelette.sekaibi.com

須田亮太: 顔出しNGというわけではございません。
ナードマグネットというバンドのギター&ボーカル。パワーポップという不遇のジャンルを今一度普及させるべく、大阪を中心に活動中。アイドルも好き。
EIGA・BUの「見る」担当。
HP:http://nerd-magnet.com/

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