[コラム] モケーレムベンベ井澤聖一の「豆腐のかど」(2014/10)


やあ、よい子のみんな、ヨーグルトマンだよ。元気にしてたかな?
なに、あんまりお腹の調子が思わしくない? 僕が来たからにはもう大丈夫!
愛と勇気と乳酸菌だけが友達さ!


さあ、毎度おなじみヨーグルトマンの「今日も快腸!」
今月は、大豆を余すとこなく使い切った、とってもヘルシーなスイーツを紹介するよ。

おっと、その前にアシスタントを紹介しておかなくちゃね。
今回もアシスタントはもちろん、ビフィー。僕の愛しのスウィートハニーさ。

なに、あなたみたいな生っ白い男はお断り?

アウッ、相変わらずpHが低いぜ!



さあ、気を取り直して、早速作ってみよう。

まず用意するのは玄米。そう、玄米。
大豆は後でたっぷり登場するから慌てないで。
まずは玄米を一晩水につけておくんだ。
これがそうして一晩経った玄米なんだけど、水が濁って泡立っていて、酸っぱいにおいがするだろう?
おっと待ったビフィー、捨てちゃいけないよ。
これは腐ってるんじゃなくて、乳酸菌でいっぱいの水なんだ。
実は玄米には乳酸菌がいっぱい付着しているのさ。

今回使うのはこの水。
そして人肌に温めた豆乳、無調整のものがいいね。その二つを混ぜて、しばらく置いておくんだ。

さあ、しばらく置いたものがこれなんだけど、
なんだかドロドロしていて、さっきよりさらに酸っぱいにおいがするね。
シンクに流さないで、ビフィー。大丈夫。
これ、どこかで見たことないかい?
今回は豆乳だけど、乳に、乳酸菌。で、酸っぱいドロドロ。

そう、ヨーグルトさ。それも植物性でとってもヘルシー。

いつもならもうこのまま食べちゃいたいところなんだけど、
さらに手を加えていくよ。

出来上がった豆乳ヨーグルトをキッチンペーパーに包んで、ザルに乗せ、上に重石を置くんだ。水の入ったタッパーなんかでいい。
そうしてまた冷蔵庫で一晩寝かせる。

なんだいビフィー、さっきから待ってばっかりだって?
ごめんよ、今回のメニューはちょっと時間がかかるんだ。どうだい、その間、僕らも一緒に一晩寝かせ……
ビフィー、包丁はまだ使わないよ?



さ、今度は、もう一方の準備をしよう。
こっちの主役は、おから。砂糖とバターを混ぜて、生地を作るんだけど、
今回は特別にバターの代わりに大豆油を使うよ。せっかくだからね。

そしてその生地をタルト型にギュッと押し付けて、オーブンで焼くんだ。
これで土台は完成。


ここで、さっきの一晩寝かせた豆乳ヨーグルトの登場だ。
水分が抜けて、濃厚さでは劣るものの、まるでクリームチーズみたいな感じになるんだよ。
ああ、ビフィー、市販のクリームチーズは出さないで。今までの苦労が水の泡だよ。

ここまで来たら完成は目の前。
鍋に別の豆乳と砂糖を入れて火にかけて、沸騰寸前で火を止めてゼラチンを加える。
そこにさっきの豆乳ヨーグルトとレモン汁を加えてよく溶かす。

豆乳をヨーグルトにして固めて、それを豆乳に溶かして、ゼラチンで固めるんだ。支離滅裂だね。
ちなみにこの時点でヨーグルトの乳酸菌は残らず死滅するよ。


これで全ての準備は完了。いよいよクライマックスだ。
ビフィー、例の呪文を唱えるよ。


『幼少の頃に生き別れになった、豆乳とおから。

現在、弟の大豆油と共にタルトを営むおからは、片時も兄、豆乳のことを忘れたことはありませんでした。

おからさん、我々、一生懸命探しました。
お兄さん、見つかりました。
お兄さんもね、苦労されたそうです。あれからヨーグルトになられて、今、ゼラチンで固まるところだそうです。
今日、お兄さん、このスタジオに来ていただいています。
心の準備はよろしいですか?』


OK、パーフェクトだ。

さあ、いよいよ鍋の豆乳を、おからと大豆油のタルトの中に、

今、感動の……再ッ!会ッ!!


あとは冷蔵庫でしばらく兄弟水入らずの時間を過ごしてもらえば完成さ。
その名も、大豆三兄弟バラ珍チーズケーキ!!


さあ、ここでようやく包丁の出番だ。ちょうどいいサイズに切り分けて、お待ちかねの試食タイム。
それでは、いただきます!


ん、なになに、味が単調すぎる?
そりゃそうさ。なんせ材料はほぼ大豆だからね。
それに、土台のタルトはもそもそしてて、口の中の水分が根こそぎ奪われるね。
久々の再会は、お互いにそれまでの変化が大きすぎて、感動的なばかりではなかったってわけさ。それもまた人生ってやつだよ。



ヨーグルトマンの「今日も快腸!」
今回はそろそろお別れの時間。みんな楽しんでくれたかな?
お相手はご存知ヨーグルトマンと、アシスタントのビフィーでした。
来月は自家製ヨーグルトを使ったタンドリーチキンに挑戦するよ。見逃したりしたら、お腹こわすぞっ。

それじゃ、また来月。
愛と勇気と乳酸菌だけが友達さ!


ん?なんだいビフィー、私は友達じゃないのって?
そう言ってくれるのは嬉しいんだけど、どうやら僕はそれじゃ満足できないみたいなんだ。
どうかな、このあと空いてたら一緒に食事でも……なに、あなたみたいなドロドロした男はお断り?

アウッ、相変わらずpHが低いぜ!