[コラム]山田好転(水、走る)の『元軍人でウルグアイ出身の性格が悪い陰陽師兼妖精コラム〜全然、怪しくないです〜』(2017/02)

[コラム]山田好転(水、走る)の『元軍人でウルグアイ出身の性格が悪い陰陽師兼妖精コラム〜全然、怪しくないです〜』(2017/02)


《九人のパリピ》

ある雨の日、何日か行けなかったジムでのトレーニングをこなし、いつも通りトレーニング前から約2キロ減で飛び出し腹の虫を宥めつつ職場への道を踏んでいる時のこと

もうこんな生活は嫌。わたしここから出て行くわと、出て行った先に何かがあるわけではないことを知っていながらそれでも現状への不満が爆発し逃走を図る飢餓感を僕は持て余してしまい

わかったわかった。もう少し考えるからちょっと待ってくれと結論を先延ばしにすることで不機嫌が治るまでの冷戦を覚悟し、精神の兵糧庫へ伝令鳩を飛ばしたところで頭によぎった

おいしいパン食べたい。

という純真に、先日知人との会話に出てきた評判の良いパン屋が目と鼻の先にあることを思い出さされたのである。

いくらおいしいとはいえ並ぶほど暇ではないし、おいしいパン屋あるあるの辺鄙なところにあるというあるあるも僕的にはないないなので、アクセスがよくかつ並んでいないおいしいパン屋探訪の開催を近日中に行うことが出来たらそれを幸せと呼ぼう。パン記念日にしよう。と思っていた矢先の出来事であったので迷いなく闊歩し到達。

頼もう!と店内の全ての人間の脳に直接語りかけるも相手との交信は、インターネットに接続されていません。と一切の解決策を提案しない絶対零度の文字を映すディスプレイの如し。

一安心し平台に並ぶ小麦粉の妖精たちを舐めるように眺めてはたと気がついたのだけれど、トレイとトングがない。

これは今、ハリウッドセレブ達の間で大流行している購入前の商品に擬音を交えて指先で突くアレをしないといけないのではないか。

しかし齢27にもなってあのような羞恥的な行為に及ぶのは願い下げである。今回はそれがしの敗けを認め小麦粉の妖精たちと添い遂げることなく店外への脱出を画策しかけたところで

「お決まりになりましたらおっしゃってください」

と発する声が鼓膜を震わせ言語として脳に直撃。

その衝撃たるやまさに雷。いかづち、と読んでください。

みつはみつはみつはみつ、、?み?あれ?名前なんやっけ?き、、君の名は、、?

というような感じで小麦粉の妖精に釘付けの視線をあげるとそこにはいかにもパン好きそうなお姉さんが僕にとってのみつはとして眼前に立ち塞がり仁王立ちでインダハウス。

左手にトレイ、右手にトング。まさに今、喉から手が出るほど欲しかったものを持ち登場するとは新手の出逢い系かとすら思えた。

あっ、、あ、はい。と不意を打たれ童貞みたいな声というよりもはや吐息レベルの何かしらの気体を漏らして

目が合うと微笑まれてノックアウト。お姉さんの人生をくださいと言いかけたところで、まだお互いよく知らないし比較的軽度の潔癖症&どんなに深く眠っていても物音で目が醒める忍者的な神経性を併発し、ほぼ毎日朝はトレーニング、昼から夜は仕事、夜中は映画を観てからじゃないと寝ないというライフをサークルしている私が小麦粉の妖精たちを育む彼女に何かを伝えるなんて言語道断。

これ即ち恋に恋しているだけなので、立ち去るがよろしと二度目の踵を返しかけたところで

店内を覆う水蒸気に気付いた。どうやら雨の湿気ではなく小麦粉に最適の湿度を保っているのだと説明書きがなくても理解した。

これは、間違いなくおいしく誇り高き小麦粉の妖精だ、、

感動のあまり昂った感情を撫で付け日夜磨き続ける目利きで二つ選んだ。本来なら歳の数と同じかあるいはもういっそ煩悩と同じ数のパンを買って帰ろうかと思ったけれど落ち着け、俺、。と今までやったことない感じで自分に問いかけて鳥肌。

まあなんやかんやで選別したのはおいしいパンとおいしいパン。

代金を払い店を出ておもむろに頬張ったところで気絶。そのまま五億年が経過したあたりで意識を取り戻したけれど五億年の間の記憶は消えていて、という某カオティック漫画の中に出てくるような設定でもってパンのおいしさを表現。

歯応えや食感に風味や具材とのバランス。なんたる奇跡。張り裂ける胸と落ちていくほっぺた。交番に紛失届けを出すレベルでした。

鉢巻を巻いてふんどし姿で店頭まで戻り「見事であった!」と伝えたいぐらい。

おいしいって本当に幸せだなあと思い歩いていると今度はカフェインの妖精との結合を要求する脳。目の前に現れるチャラめのカフェ。前々日にハンバーグから鶏肉の山賊焼きに変更した後悔が具体化し遅めのランチ歓迎&コーヒー飲んでゆっくりできそうなので入ったんですがここが大変でした。

店員さんは愛想良くて良いお店なのかと思いましたが、お腹すいてないのに食べないといけないオシャレだけどおいしくはないハンバーグプレートとうすーーーいコーヒー。そして店内に漂うアイコスの匂い。

ファックス!シャイン!

なんなら読書もする気だったのでコーヒーもついて千円ならいいかと思って入ったものの食事を開始するあたりで

「九人いけますか?」と顔面のみ入店し店員に許可を求める女性を筆頭に

ひろし
ひさし
ゆうき
ゆき
まさし
まさき
まき
みき
みさき

が登場!

店内あたふた、ガヤガヤと落ち着かない空気になり少し時間が経ってから、食後のコーヒーって店員側の時は食事終わるの見て出してたけど、言わないとあかんのやなあと学びを得て注文。

前述の通り、希釈せず使う洗剤を誤って薄めた誰かによってそれを使って洗い物をするハメになった時の如しコーヒーを飲むともなく喉のあたりにこぼしていたら

九人のパリピがにわかに騒ぎ出してしまったので退店。

ファックス!ファクシミリ!シャイン!

九人いても我慢できるのはやはりテレビで見ていた巨人のオーダーぐらいですね。

仁志
清水
高橋
松井
清○原
江藤
二岡
阿部
上原

だったら騒いでいても嫌じゃないです。


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◆自己紹介
山田好転(Yamada Koooooten)
大阪の『水、走る』というバンドのフロンマンで、ソロ名義での弾き語り活動もしています。元軍人でウルグアイ出身の性格が悪い陰陽師兼妖精です。全然、怪しくないです。
◆Twitter
koooooten(個人)
mizuhashiru(バンド)


◆HP
mizuhashiru.com