[コラム] 受付嬢マホの「夜の飛ばせ方Reloaded」(2017/01)
少し前まではもう少し頻繁に投げかけられていた「好きな音楽はなんですか?」という質問がとても苦手だ。
どの位苦手かというと、菅原のように声の大きな人やカニカマボコより苦手だ。
分かりにくいか。
履いてるパンツの色を答えるより苦手だ。高校の頃の写真見せるより苦手だ。
なんせ相当苦手だ。
単純に自分のルーツや生き様を、つい先日まで他人だった人に話しているようで異常に抵抗がある。
私が「何かいい音楽があれば教えて欲しい」と尋ねたなら「どんな音楽が好きなのか」と聞かれても合点がいく。
屁理屈なのは重々承知だが「なぜそんな事を聞くのか?」とすら思ってしまう。
似た類の質問として「最近いいバンドいます?」といったものもある。
いいバンドってなんだろう?私のいいとあなたのいいは果たして一致するのだろうか?
だから、私はこの問いにこう答えるようにしている。
「Mr.Childrenです」
嘘でも馬鹿にしているでもない本音だ。
アルバムを全部持っているのもミスチル位だし、桜井和寿になら寿命を分けてもいいぐらい尊いと思っている。
そして都合のいい事にこの返答をすると9割方この会話は終了する。
マホトーンのように便利な呪文だ。
妙に遠まわしで意地の悪い言い方をしてきたが、根本的に何がそんなに嫌かというと
自分の好きなバンドや音楽を誰かに批評されたくないのだ。
心の狭い私は自分の好きなバンドをあーだこーだ言われるとすぐに心のシャッターを下ろす。
コンディションが悪いとその人を嫌いにすらなる。
「好き」を共有するのは平和だが、「好きじゃない」「嫌い」はお茶を濁しておけばいいじゃあないか。
「嫌い」は結託すると「好き」が集うより妙な絆が生まれるが、それはまぁ負のオーラを発する。
日本人の奥ゆかしさ、もっと大切にしましょうよ。
ここまで熱く語ったのには理由がある。
それは「これは私にとってのラーメンにおいても同じことが言える」という事だ。
ただ、もう、とてもとてもとても辛い。
ラーメンが好きと言っただけで「お勧めはどこですか?」と聞かれる。
↓
「私の好きなラーメン屋を聞く前に貴様の好きなラーメン屋名乗れや」と少し苛立つ
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っていうか別にそんなに興味ないやろ。2時間語るぞ。
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だからってマニアなわけではないから何系とかは知らん。ジャンルなんて「あっさりしてる」か「こってりしてる」くらいで十分やろ。
音楽も一緒や。「ミクスチャー」と「ラウド」の棚への割り振り誰がしてんねん。国家か?
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本気で聞きたいなら「こないだインスタにあげてたまぜ麺、美味しそうやったけどどこのですか?」くらい具体的に、絶対ディスる気ない事前面に出して話せ。
と、お勧めのラーメン屋を聞いただけで少なく見積もってもこれ位の感情が私の中を駆け巡るのだ。
それ位の腹をくくってから私に食べ物、特にラーメンの話をしてもらいたい。
違うな。
こんなにめんどくさい女なので、もう私にラーメンの話をしないで欲しい。
別にワンタンメンもチキンラーメンも好きだし、大好物は日清の焼きそばに溶き卵落として炒めたゲロみたいな食べ物な私の好きなラーメン屋なんてどうでもいいじゃないか。
せめて「ラーメン好きならここが美味しかったよ!」くらいにとどめておいてくれ。
あぁ、でもそれはそれで「何故か急に貸し出されたCD」みたいになって感想求められて面倒だな・・・
とにかく、だ。
音楽の好みも食の好みも、偶然知って一致してじわじわ距離つめて
「もしかして、あのバンド観に来てたってことはこのバンド、とかも好き・・・だったりします?」
「おぉ!好き好き!」
ぐらいの風情があってこそだと思うのだ。
唐突に聞くのは露出狂みたいに受け止められる事もあるので気をつけましょう。