[コラム]いおかゆうみの「ちぐはぐな日々。」(2017/01)


先日、通っていた高校の近くでライブをする機会があった。久しぶりに降りた駅はロータリーができていて小綺麗になってた。早く着きすぎたからミスドに行こうと思ったけど、見当たらん。あれ、ここになかったっけ。よくたまっていたミニストップもないやん。100円ショップもないし。あー、無くなったものばっかりや。

ライブをしたお店のマスターは同じ高校のずっと先輩。軽音学部に入ってたから、地域の行事に参加する時によくお世話になった。

自分が何年生の時に何クラスやったかなんて全く覚えてない。何期生かなんて覚えてるわけない。せやのになぜかマスターが覚えてはって、「ゆうみちゃんは31期生やで」って教えてくれはった。

共演は高校の時の後輩ばかりでアットホームな感じやったけど、久しぶりに街を歩きたかったから会場から出て、高校生の頃によく行ってたマクドまでゆっくり歩いてみた。変わってないところもあって安心した。とりあえず時間まで、マクドでボーッとすることにした。ここでもよく溜まったなあ。ポテトだけで3時間以上おったもんなあ。とか思いながらスープを飲んでる辺りに月日を感じた。高校生はスープを飲まん。コーラや。大きいコーラ飲むんや。

さっむ、どんだけ寒いねん、くっそー。って一人でブツブツ言いながら会場に戻ったら、先生がおった。二人もおった。
マスターが「今日ゆうみちゃんを観に高校関係の人が来るで」なんて言うもんやから、なんとなくわかってたから驚かんかったけど驚いたフリはした。大人やから。
あと単純に目の前に先生おると嬉しかったから、大きい声出てもうた。
一年前に同窓会があったから久しぶりな感じはせえへんかったけど、先生が元気そうにお酒を飲んでてそれだけでいいと思った。

ライブ中は一切先生の方を見んかった。
先生が見てくれていると思うと何回か泣きそうになったから。
ろくに学校に行かず、淀川やライブハウスばっかり行ってた生徒のライブをこうやって観に来てくれるだけで本当にありがたい気持ちでいっぱい。歌っていてよかった。

歌い終わったら、いい歌やったと二人とも言ってくれた。CDも買ってくれた。またライブ行くわ、他にも誰か連れて行くわって言ってくれた。

「受験勉強は一生懸命やってたもんな。あの大学の英語の試験は整序問題がよく出るからって聞きに来てたもんな」ってうちが覚えてないことまで覚えてくれてる。
「俺はもう歳やから国語の先生やってんのに漢字出てこおへんわ、黒板は平仮名ばっかりやぞ」って言うくせに担任持ってたわけでもないうちのことはずっと覚えてくれてる。
そうや。二人とも担任じゃないねんや。英語と国語を教えてくれた先生や。それやのにこんなに気にかけてもらって、もううちは頭が上がらん。

変な生徒のことは覚えてるもんや。って言われて、あの時の自分を褒めてやった。生きてるだけでこわかった、この先何があるか不安で仕方なかった、心の中に広がる黒い靄をどこにぶつけていいかわからんかった、風が吹けば涙が出てくるようなそんな日々の中で、確かにみんなと大きな声で笑ってた。大きな声で歌を歌ってた。不安なくせに何にでもなれるような、どこにでも行けるような自信もあった。

思い返せば、きっと、あれは青春。

ねえ、先生。
先生がどこか遠くの街へ行ってしまっても必ず会いに行くから。歌と一緒に会いに行くから。そしたら次は一緒にお酒を飲もう。飲みすぎんように夜の11時までな。