[コラム]いおかゆうみの「ちぐはぐな日々。」(2016/04)


今はだいぶマシになったけど、うちは昔から人見知りが激しい。初めて会う人と話すのがなかなか苦手。相手が何を考えてるかを推測してばかりで上手いこと言葉が出てこないまま会話が終わってしまう。そして、こうやって思われてるんやろなあって自意識過剰な被害妄想が炸裂し、トイレに駆け込む。小学生からずっとそう。


もちろん今でもコンプレックスはたくさんあるけど、25年付き合えばまあ大抵のことは笑えますよ。大人やし。悲しくなる時もあるけれど。
だけどそうやって受け入れられるようになったのは最近の話。

うちは首の後ろに大きめのホクロが2つある。それがどうしても嫌やって小さい頃からずっと髪の毛をのばしてた。隠していたら気にならんかったから、髪の毛をくくることもなかった。

春が終われば夏が来る、そしたら水泳が始まる、髪の毛はぜーんぶ水泳帽の中へ、あー憂鬱憂鬱。とめざましテレビを観ながら思っていた小学生の私は救急箱を取り出して絆創膏をホクロの上に貼って、ニヤリとして学校へ。

そしてついに水泳の時間。しかしうちは無敵モードやから、余裕綽々で体操をしていた。ふいに肩を叩かれ、

「首どうしたん?」

「あ、うん、まあ…。」
答えを用意したなかったから上手く答えられず、言葉を濁すのみ。

その後、みんなが首の絆創膏の理由を知りたがっているという被害妄想に駆られ、水泳が終わってすぐその絆創膏を剥がしてトイレのゴミ箱に捨てた。

家に帰ってお母さんに
「ゆうみこのホクロ嫌や!取りたいねん!」と、何度も何度も言うた。なあなあ、取りたいねん!

「誰も見てへんよ。
見てたとしても慣れたら何も言わんくなるから大丈夫よ。」
って優しく言うてくれたけど、納得いかんままその日はずっとホクロ取りたい取りたい思ってた。

「お母さんはお尻のやつ気にならへんのん?」

「気にならへんよ。ゆうみはお母さんとお風呂屋さん行くの恥ずかしくないやろ?だからお母さんも恥ずかしくないの。目印みたいやろ。ここにあるのがお母さんは好きやねん。」

お母さんはお尻の目立つところに楕円形のホクロがある。卵の大きさぐらいの。
銭湯や温泉に行っても堂々しているお母さんの隣で、うちはタオルを首に巻いてた。

目印かあ。目印があるっていいなあ。
首だけでうちやってわかってもらえるんかあ。
って思えたのは20歳ぐらいの時。

胸の位置まで伸びた髪の毛をバッサリ短くした。首がスースーした。ホクロのことをたまに言われるようになった。スイッチやー!って押されることもあった。だけど全部嫌じゃない。何ともない。
そしたらホクロのことなんてどうでもよくなったし、何やったら忘れててこないだ誰かに言われた時に思い出した。

ただ、首の後ろにあるホクロは「発情ボクロ」っていわれてて、男の誘いを待ってるサインらしい。

サイン出し続けてるのに何もないとか恥ずかしくなってきたから、今年は、髪の毛、伸ばそ。