[コラム]山田好転(水、走る)の『元軍人でウルグアイ出身の性格が悪い陰陽師兼妖精コラム〜全然、怪しくないです〜』(2016/03)

[コラム]山田好転(水、走る)の『元軍人でウルグアイ出身の性格が悪い陰陽師兼妖精コラム〜全然、怪しくないです〜』(2016/03)


《千頭の先頭で戦闘》

今まであまり人に話したことはないのだけれども実は幼少期、よく銭湯に行きました。

独白めいた書き出しからの知らんがな!という内容に着地するも構わず書き続けるのがコラムニストであります。

いや、正しい言い方をすればまだ働いてもいない少年が金銭を支払い湯に浸かることへの責任の所在は明らかではないので噛み砕いて話すと

頻繁に銭湯に行く家庭に生まれた。というのが正史となりますね。まさふみ。

今から話すことは全くの嘘なんですが、あっ!物心ついたかも!と思った時にはスーパー銭湯の湯船だったし、かけがえのない友達はだいたい早死にします。

いや、そんなことはないです。人間が生まれてから唯一、約束されている「死」に対して現在、生存している自分から見て先に死んだ人間の方が尊いなんてことは特にありません。過剰に過去は美化するもんではない。

話が東奔西走するのは持ち味の一つですので特にお気になさらず。勝手に走るタイプの筆を使っています。

とにかく両親ともに銭湯が好きで、幼少期は家の風呂に入ることの方が稀でした。家に風呂あったのに入ることが滅多にないから物置みたいになってたし。

毎日毎日、銭湯に行くもんですから番台のおっちゃんおばちゃんにはたいそう可愛がってもらって

ある日その銭湯のおばちゃんが「昔から貯めてたんやけどこれ学校に持って行ってくれへん?」と言われてたベルマークを持って行ったら翌週には一輪車が20台ほど小学校に届いて謎の表彰状もらって、その夜に銭湯にそれを持って行ったら「いらん」と言われて、子供ながらに大人の身勝手さにため息つきましたね多分知らんけど。

幼少期の銭湯は大人360円、子供120円でした。多分。

それを毎日と考えるとゾッとするけどそれが生活でしたので今、その回収について思いを巡らすことを人は無駄と呼びます。

一口に銭湯と言っても同じところに毎回行くことで満足出来る人種ではないので日によって行くところが変わってました。

中でも先程のベルマークおばさんの「菊水温泉」に行く頻度が一番高かったです。なにより近かったし。

子供には嬉しい「二階」「滑り台」
という今、思えばかなりマイノリティーな銭湯でした。

薬風呂も週替わりで、サウナと電気風呂は怖くて入れなかった。

ただでさえ親父の「100秒数えろ」で数えれた試しのない僕がそれ以上の高温や、かつ電気が流れるなんて地獄に耐えれるわけがない。

という感じで、僕自体はそれほど銭湯好きじゃなかったんです。

何が好きかと言うと、風呂上りにアイスを買ってもらえるのでついていってたぐらいの好き度。

そのアイスもやはり夏目漱石似のおじさんとベルマークおばさんが営んでいる二階滑り台のとこには\60で二つが一つになるみんな知ってるソーダのやつがあったり、メロンのような外装のやつとか、チェリオのチョコバーみたいなのもあった。

僕はもっぱらソーダのやつが好きでしたね。あー、懐かしい。

次にちょっと離れたところにあるマンションの一階にあるスタイルの「若竹温泉」

ここは二番手ぐらいの感じで、前述の菊水温泉が休みの時に主に行ってました。

風呂の温度が高くて親父の「100秒数えろ」が言い終わる前から123456789.…ひゃく!と叫びながら飛び出してました。それ以外の記憶あんまないな。

あとは、校区外にあった「ゆ〜ゆ〜らんど」という何か僕がスベったみたいやん、、という名前の銭湯なんですが小学生の頃に友達と校区外に行くあのワクワク感が好きで行ってました。

そこは露天風呂があったり昔のインベーダーゲームみたいなのがあって、小遣いで必死にやってましたね。一体それに何の意味があったのかはわかりませんが。

そして忘れては行けないのがたまにわざわざ車で行く《21世紀の公衆浴場》という謳い文句の「神徳温泉」

ここはそれはまあ謳い文句なだけあって広かったし風呂の種類も豊富で、露天風呂もあったしエンタメ性が非常に高かったです。

半分、スーパー銭湯みたいな感じなんですが入浴料は普通の銭湯と同じでロビーには飲食スペースもありそこで売ってるソフトクリームを食べてました。

バニラとチョコはそれぞれ\200ぐらいなのにミックスになると途端に\300になる謎について小学生なりに想像してましたね。

需要の少ないものは必然的に価格も高騰する、世の中とはそういうもんだと学びました。

基本的に、我が家のルールとしては番台を通ったが最後、その銭湯を出る時間のみ告げられて後は個人行動。

親父も一人になりたかったんでしょう。

小学生にその感じはわかりませんし、だいたい一時間?二時間ぐらい入るからもう退屈で仕方なかったです。

そういえば、幼い頃って龍とか虎とかカッコいいじゃないですか。

まだ低学年の頃だと思うんですが背中にそのカッコいい龍が描かれたおじさんがいて純粋に「うわ!かっこいい!こんなんアリなんや!僕もしたい!」と思って

「おっちゃん、背中の龍かっこええなあ」言うて話しかけたら気さくで、色々話してたらたまたま入ってきた親父がギョッとしてましたね。

「あ!おとーさん!このおっちゃん背中に龍、描いててかっこいいねん!僕もやりたい!」

なんて無邪気に言うもんですから多分、相当困ったでしょうね。

気を使った龍のおっちゃんが先に出て「ボウズまたな!」って言うた背中を覚えてます。

懐かしい、、

近所の銭湯だけでは飽き足らずたまに健康ランドやスーパー銭湯へ出向いたり、わりと湯に浸かることに関してアクティブな血が流れているはずなんですが

やがて大人になってから一人でどこでも行けるようになっても、あまりその選択はしません。

銭湯にもめっきり行ってないし、これを書いて行きたくなるかと思いきや特にそういう気持ちにはなりませんでした。

ただ加速するノスタルジーに悶絶する程度で、家の風呂に不満はないし。

あとはただの回顧録と化したこの文章の終わりをどうするかと結構長い時間考えていたら、また春が訪れていました。

というキモい終わり方をしておきます。

◆自己紹介
山田好転(Yamada Koooooten)
大阪の『水、走る』というバンドのフロンマンで、ソロ名義での弾き語り活動もしています。元軍人でウルグアイ出身の性格が悪い陰陽師兼妖精です。全然、怪しくないです。
◆Twitter
koooooten(個人)
mizuhashiru(バンド)


◆HP
mizuhashiru.com