[コラム]いおかゆうみの「ちぐはぐな日々。」(2016/02)


驚くほど速い時の流れ、もう一年の十二分の一が終わろうとしていて、もう冬が終わろうとしているなんて考えられぬ。そのうち今よりずっと皺が増えていって、おばあちゃんになる。その時には縁側のある家で住み、猫と犬と暮らしていたい。それが人生においての最大の夢。緑茶と塩昆布で昼下がり、たまに震えた手でギターを弾いて、何言うてるかわからん歌を歌ったりしていたい。

そんなことばかり考えていたら、いつの間にかもう二十五歳になっていた。びっくりするほど何も変わらんけど、ただ変わったのはちゃんと化粧を落とすようになった。どれだけ酔っぱらっていても、必ず落とす。コートを脱ぐ前に、リュックを降ろす前に、洗面台へ向かう。メイク落としシートじゃだめ。ちゃんと、落とす。シミ、くすみ、コワイ。十年後の自分に褒められるために日よけせぬように過ごす毎日。あー、こわいな、こわいこわい。

しかし、さっき書いたようにうちの夢は穏やかな暮らしをするおばあちゃんなので、早く歳をとりたい。これは子どもの頃から思っていたこと、いつも何だか大人ってたのしそう。考えることや困ることも多いけれど、なんだかとてもたのしそう。いつまでもそんな風に自分より年上の人達に憧れている、子どものままのうち。

自分の人生の中で一番尊敬しているのはやっぱりお父さんとお母さんで、誰にでも紹介したい二人。ライブにもちょこちょこ来るので会ったことある人はいると思うけど、あの自由な二人のおかげでうちはこんな感じで生きている。小さい頃から「ゆうみの好きなようにしなさい」「好きな方を選びなさい」と言われてきた。それでも一人っ子で人の顔を気にするうちは優柔不断に変わりないけど、そうやって言い続けてくれたことに本当に感謝。「お金がある人じゃなく、夢を持っている人と結婚しなさい」としつけてくれたお父さんのおかげでお金持ちの人には全く縁がありません。貧乏な生活を続けて、今や小さいながらも自分の会社を持つお父さんやから言える言葉。おかげで初デートで牛丼屋さんへ連れていかれても、嬉しいだけやで。お金のかからん女になったで、ありがとうやで。

二月はお父さんとお母さんの誕生日がある月。ずっとそのことばかり考えてる。プレゼントは何をあげようかとか、どこかへ連れていってあげたいなあとか。我が家はクリスマスも父の日も母の日もプレゼントをあげるからあげる物がなくなってきた。今年は手作り料理でパーティをしたいなあ、とか。何をしても喜んでくれるのはわかっているけど、毎年悩む。うちも親知らずが生えてきて、二人も皺が増えてきて、老眼鏡とかかけちゃって、お母さんもシミが増えてきて(それでも肌はとても綺麗)、驚くほど速い時の流れにこわくなってしまうこともあるけど、そのおかげてわかってきたこともたくさんあるから、いつまでも二人には元気でいてほしいし笑っていてほしいなあと心いっぱい思う二月。