[コラム]BLENDY MOTHER FATHER / RED EARTH 寺澤ちゃんの
「Sank you Fantasy」(2016/01)



僕は寺澤ちゃん。8歳。
今僕が暮らしているのは2126年1月。つまり皆より110年先にいる。
どうして未来にいるかは言えないのは知っているでしょ?
未来のお話を今日もしたいところだけど、このお話を見つけちゃったんだ。
君たちのいる現在の寺澤ちゃんが書いた物語。
寺澤ちゃんは探偵もののお話をいくつか書いてて、未発表のものがいくつかあるんだ。
それを僕が勝手に皆に教えちゃおうと思ってね。
これは探偵事務所のお話なんだけど、探偵小西とその助手のすう子のお話なんだ。
難しいミステリーじゃないから気軽に聞いててね。


「先生明けましておめでとうございます」すう子は新年4日にファッション探偵事務所にやってきた。
仕事の依頼が入ったとは聞いていないが、探偵の小西にとにかく来いとの連絡が入ったからだ。
 小西はソファに座りお茶の入った湯のみを磨いていた。
「あぁ、おはよう」ちらりとすう子を見て言っただけですぐに湯のみに目を戻した。
「おはようじゃないですよ。年が明けたんだから、おめでとうございますじゃないですか」口を尖らしながらソファに座り言った。
「そういえばそうだったね」言葉とは裏腹に湯のみを磨き続けている。
「もう、先生が呼び出したんでしょ。仕事が入ったんですか」
「あぁそうだそうだ。仕事じゃないんだ。思い出したぞ」湯のみを机に置き目を輝かせた。「今が何か知っているかい?」
「知ってるも何もお正月でしょ」
「そうだ、そうなんだよ。お正月だからね。君も何か欲しいだろう?」片眉を上げにやりと笑った。
「えっ先生もしかしてお年玉くれるんですか?」すう子の目も輝き出した。
「ふっふっふ。その通り。しかし君も探偵助手だ。普通に上げては面白くもなんともない。やはり謎が必要だろう」
「えー、謎は確かに興味ありますけど、お年玉くらい普通に下さいよ」
「普通に上げてはここで働く意味がないからね、謎が解けたらあげる事にしよう」
「分かりましたよ。謎なんかちょちょいのちょいで解いちゃいますよ。で、どんな謎ですか?」
「お年玉でも落とさない玉はなーんだ?」
「えっナゾナゾですか?」
「まぁそんなところだ。答えはこの事務所にあるから事務所掃除しながら考えて見つけたまえ」そう言って小西は立ち上がった。
「あれ?先生は何処か行くんですか?」
「そう、ちょいとね。頑張って見つける事だね。そしてお年玉をゲットするのだ」
「はーい。とにかく掃除しながら考えます」
 小西が出て行った後掃除しながら考えていたが、一向に分からない。
すう子には謎の意味さえ分からなかった。
仕方が無いので、掃除に専念する事にした。一時間程すると扉が開いた。
あれ、先生帰ってくるの早いな、そう思って扉に目をやると見たこともない男が立っていた。見た感じ30過ぎといった男だ。どうもこんにちは。男はそう言うなりソファに座った。
 あー。すう子は声を上げそうになった。先生の事だから、この男からヒントを得よと、そういう事だろう。ソファの向かいに無言で座り、男の顔をじっと見つめた。私だってだてに長く先生の助手をしているわけではない。
先生は意地悪でこういうイタズラ的な事が大好きなのだ。甘くみてもらっちゃあ困る。

落とさない玉、落ちない玉「落ちないんですね?」すう子は男の顔をじっと見つめ言った。
「えっ、さ、さすが探偵さんです。おちないです」男はがっくりした顔で言った。やはりそうだ。私を舐めてもらっては困るな先生。先生の考えそうな事くらい分かるようになってきたんだから。
「やっぱりね」すう子はにやりと笑った。
「で、どうなんですか?見つかりそうですか?」男は不安気な顔だ。
「いや、そんなすぐには見つかりませんよ。もう少し時間を下さい。絶対見つけますから。ヒントはもう目の前にあるんですから」すう子は悩んだ。
「目の前にヒントが。ど、どこに。まぁでもそうですよね、優秀な探偵さんですもんね。ちゃんと分かってますから。見つけて頂けると信じていますよ」
「大丈夫ですから、絶対見つけてみせますよ」
「あーほんと、はめてあげたいんですよ」男は頭を抱えた。
「えっ?」すう子は眉間に皺を寄せた。「そりゃね、はめたい気持ちは分かりますよ。だけどね、それを口にしちゃダメですよ。私だって真剣に今考えてるんですから」
「分かっております。すいません。真剣に探して頂いてるのは分かってるんですが、焦ってしまっていまして。あー合わせる顔がない」
「そうですよね、はめなきゃならない立場なのにはめられなかったんだから、落ち込む気持ちも分かります。」きっと小西に私を混乱させるように言われてやってきたのだろう。そうは問屋が卸さない。「大丈夫です。ちゃんとはめられたという事にしときますから」
「えつ?ちゃんとはめなきゃ意味がないんです」
「分かってますって。だから真剣に今考えてますから黙ってて下さい」
「あぁすいません。本当何処に落としたのやら」
「え?落ちない、、、でも落としたんですか?」
「そうですよもちろん」
「新たなヒントですね」
「ヒントになるのでしょうかこんな事が」
「なりますとも。少し黙ってて頂ければすぐに見つけますから」
 二人は暫く無言だった。沈黙を破るように扉が開き小西が帰ってきた。
「やー、ありましたよ」小西は男に向かって言った。
「あーほんとですか。ありがとうございます。感謝してもしきれません」
「はい、これでしょ?」小西は男に小さな箱を渡した。すう子は何がなんだか分からないといった混乱した顔を二人に向けている。
「本当にありがとうございます。ではお金はちゃんと振り込んでおきますね」
「ではこれが結婚指輪の落ちていた場所などの詳細です」小西は男に封筒を渡した。「それでは、また何かあればすぐ連絡下さい、落内さん。プロポーズ頑張って下さいよ」封筒を受け取ると何度もお辞儀をしながら落内は出て行った。
「先生、あの人の名前」すう子は混乱した顔をしている。
「そうだよ、落内玉五郎さんだよ」
「えっ?どういう事?ん?えっ?じゃ、じゃあ、お年玉の謎とは無関係なんですか?」
「もちろん全くの無関係。結婚指輪をなくしたようでね、プロポーズが出来ないから困り果てて探して欲しいという依頼だよ。ただ名前が落内だから君が混乱して面白いかと思って呼んでおいたのだよ」小西は方眉を上げにやりとした。
「なんですかそれっ、ひどいです。じゃお年玉の謎ってなんなんですか?私真剣に考えたんですから」すう子は口を尖らせ今にも泣き出しそうだ。
「まぁ、謎にオチがない。つまりオチのないミステリーだよ。謎がないって事。はいこれがお年玉」小西はそう言い、すう子にお年玉袋を渡した。
「ひどいですほんと。でも、くれるんですね。嬉しい。やっぱりなんか、ありがとうございます。今年もよろしくです」すう子は何故だか悔しいがとても嬉しかった。
しかし落内とのやり取りを思い出すと恥ずかしい気持ちと悔しい気持ちが溢れてきた。
もしかして普通の依頼を受けない先生は私にお年玉を渡す為にこんな普通の依頼を受けてくれたのだろうか。なんだか嬉しい。そして何気なくお年玉袋の中身を取り出した。
「先生これ?」中からは給料明細が出てきた。そういえばまだ給料をもらっていない。
「すまないね、まだ給料が用意出来てないんだ。落内さんからお金が振り込まれればすぐに払うからね。」そう言い小西はニヤリと笑った。
「先生」すう子は小西を睨んだ。「やっぱりひどいです」

END

どうだった?面白かった?
お正月のお話を探していたら偶然見つけたんだ。

そうだ2016年1月といえば20日にRED EARTH1が全国のタワーレコードで発売されるんじゃないかな。
是非みんな買ってあげてね。
あっそうだ、2月の10日には梅田シャングリラでレコ発ツーマンライブもあるみたいだよ。

2016年02月10日(水)
  RED EARTH presents『レッドアースに八十八ヶ所巡礼させろ!』
◆LIVE:
RED EARTH
八十八ヶ所巡礼
o.a.あり

open18:00 start18:30
前売:¥3000 当日:¥3500【1drink¥500別】

*各プレイガイド1月6日(水)10:00〜発売開始!
ぴあ、ローソン、イープラス、シャングリラ予約・店頭にて販売あり。

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※必ず公演日名、お名前、お電話番号、枚数をご記入の上、お申し込み下さい。
確認次第ご返信いたします。

2015年現在 寺澤 尚史
寺澤尚史 :vocal, acoustic guitar
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