[コラム]山田好転(水、走る)の『元軍人でウルグアイ出身の性格が悪い陰陽師兼妖精コラム〜全然、怪しくないです〜』(2015/06)
《半魚人伝説》
「兄ちゃん、話しかけてもええか?」
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僕は祖父に会ったことがない。母から生まれた母太郎としてこの世に生を受けた時には既に、祖父Aも祖父Bも現世にはおらず。
法事でよく見る、今にも消えてしまいそうな薄い写真に映りながらハゲているのがAだBだと言われてもピンと来なかった。
隔世遺伝を知ったのは中学二年生の時で、その年だけは仏壇の写真を見てソワソワした。
お盆に両親や親戚から「じいちゃん帰って来てるで!」と言われても「ほああ。(帰って来てるも何もなあ。それ言われてどんなリアクションしていいかわからんわ。)」という感じが小学校四年生ぐらいから現在に至るまでの習慣になっている。
でも、Bothばあちゃんが亡くなってちょっとはわかったような気がした。
それまでいた人がいなくなるのは寂しい。
これはどうやら人間の持つ感情の一つらしく、元軍人でウルグアイ出身の性格が悪い陰陽師兼妖精の僕にも生まれつき備わっていた。
それをお盆だから。とか、みんな集まってるから。とか、根拠のない理由でそこにいることにする日があってもいいじゃないか!と今は思う。
そう。ばあちゃん優しかってん。映画も見に連れてってくれたし、おもちゃ屋さんで好きなんこーてくれた。僕が物心ついた時から手押し車(シルバーカーとも言うらしい)を押してて、子供の頃は意味があんまわかってなかったけど悪かったんやね、足。そんなばあちゃんと並んでよく商店街を歩いた。
いっつもお金くれるから、なんか顔見たいだけやのに行きにくくなってきた中学三年生の夏。
後から考えると、その時の手元に、という意味かも知らんけど「これだけしかないねん」って言うてお札を握らされた時、涙が溢れてきて「こんなん欲しいから来てるんちゃうねん」と涙声で突き返す僕に「ええからええから」と。
その少し前に、もらわへんのは失礼やぞ!みたいなん誰かに言われて、その少年の頭の中は足の踏み場もない程に散らかっていた。
僕、昔みたいに百円くれてジュース買っておいで。のまんまで良かったんやけどなあ。(しかし、頂いたお金は全て使いました。)
そんなことを思い返すぐらいには長く人生を生きてきてようやく四半世紀を過ぎたところ。
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その声の主は見たところ齢70は超えていて、僕の三倍でもおかしくないない。うんうん。じいさんの顔、思い出しながら。
「もう話しかけてとるがな!」と半分笑いながら半分本気で返す。これが自然に出来た自分に少し驚いた。
子供と老人には敬語使わんでいい。これは暗黙のルール。大阪のクラシカルでモダンなスタイル。みんな知ってる。
じいさんsay「ようけ泳ぐなあ。トレーニングか?」
僕say「トレー、、んー。そんな感じちゃうなあ。趣味かな!」と言いながら肌に張り付いた水着を脱ぐ。
そう。この話の舞台は脱衣所である。先程のセンチメンタルな思い出も諸々、全裸の僕による回想に他ならない。
僕の、まだいないはずの息子は約一時間半前、水着を着用する時ぶりにこのコンクリートジャングルに解き放たれている。
じいさんのいるかいないかいないかイルカもそれはもう野晒し。直視はしていないが。
それでもじいさんは続ける。
「いつ息吸ったらええのん?」
?!??!!??!!!!???!!!!!???!
いきなりヘビーな人生相談を受けるには俺たちまだキスはおろか、手も繋いじゃいないぜベイビー。
「クロールぐらい出来るようなりたいねん。」
おおっと、、泳法についての相談か。一安心。
そこから五分。無料レッスンが始まった。息継ぎのタイミング、その時の態勢に、腕の角度、視点、その連続運動のリズムなど。
その日の、矢継ぎ早に放たれる質問に答えて以来、じいさんの日課の一つに
・毎日泳いでる孫ぐらいの年齢のアイツに話しかける
というのが加えられたようだ。
しかし脱衣所で会う確率は低いと踏んだじいさんは翌日から、僕の泳いでるコースに音もなく忍び寄り
ターンのタイミングで話しかけてくる。
いやいや、、今、またターンしようとしたやん。まだ疲れてないから泳ぎ続けたいねん。今なん?その話、今じゃないとあかんの?なに?言うてみぃや!
「話しかけてもええ?」
「いや、もう話かけとるがな!!」
おあとがよろしいようで。
〜あとがき〜
はい。というわけでこれは全て実話でございます。最近はジム(という名の区民プール)に行って身体を鍛えています。健全な肉体にこそ健全な精神は宿るらしいので。未曾有の性格の悪さも少しはマシになるかなと、取り組んでいる次第であります。
さて、今月からコラムに参加させてもらうので自己紹介でも、と思ったんですがコラムニストとしてはコラムで勝負しようと一本、オファーを受けた直後の真夜中に一時間かけて書いております。お目汚し失礼します。
おっと、コラムニストではないという報せがCIAの調査により明らかになりましたので軽く自己紹介をば。
当方、ボーカル希望です。作曲は出来ません。詞は書けます。楽器は出来ません。プロ志望。ギター(出来れば二本)ベース、ドラム、キーボードで一緒に夢を叶えれるメンバーを探しています。好きなバンドは◯◯と△△です。興味持ってくれた人はメールください。
みたいな輩が生ゴミに沸く得体の知れん虫より嫌いな陰陽師兼妖精です。
水、走るというバンドでボーカリゼーションとギターリンギングを担当しています。
その名を、山田好転と発します。
これからファイヤーをループさせるようなコラムを書いていきますので、読んで面白いと思ってくれた方は是非とも水、走るやソロのライブに来てCDを買って、また次のライブにも来て新しいCDが出る度に買って、グッズなんかも出たらすぐ買って、新しいライブがある度に来て、何かしらの労働の対価で得た金を経済のために循環させてください。鬼絡みキボンヌです。一切の質問は受け付けていません。
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『流水、高らかにvol.5』
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