[コラム]いおかゆうみの「ちぐはぐな日々。」(2015/06)


感染性胃腸炎になった。
それは関東ツアーから帰ってきて数日経った日のこと。お腹痛いなあ、体だるいなあって思ってたけどそれでもいつも通り15時間ほど働いていた。

翌朝、起き上がれへんほどの腹痛。水を飲むだけで下痢をおこし、熱もあった。

這うようにして、というより、いやもう、オムツしたいぐらいあれがあれしそうで、ああ、終わりやと何回も心の中で叫んでた。

お医者さんは話しを聞くだけで感染性胃腸炎やなとサラッと言って、まあ、免疫力低下してたんちゃうか、数日で治るよ、大丈夫です。って言うてくれた。

オムツせんでいいんでしゅか?とか、治ったってどうやってわかるんでしゅか?とか、色々聞きたかったけど、聞いてるうちにあれがあれしそうでもうはよ診療室出てトイレに駆け込みたかったからやめた。

昔からお腹に心があると思ってる。体のどこかしこにも心はあるとしても、お腹に一番、心がたくさん詰まってると思う。

お腹が空いたら悲しくなるし苛立つし、緊張すればお腹が痛くなる。嬉しくて幸せな時はお腹の中がポカポカする。

関東ツアーは4日間連続で行われ、前半2日間は東京、後半2日間は横浜。全て初めてうたう場所、横浜には足を踏み入れたことさえなかった大阪の女。

うたう歌は会場に入ってから決めた、それは全日程そうしてた。作りたい空気をちゃんと考えてうたをうたった。普段からしなければいけないことと改めて向き合ってみたら、ああ、しばらくちゃんとしてへんかったなあと反省したりして。
上手くできたこともあれば、上手くできへんかったこともそりゃあった。
悔しくて惨めで最終日には泣きながら歩く西荻窪の夜。

空に星はなかったけれど、涙で滲む街はとても美しく、このための4日間やったんやなあ、って妙に納得し、翌朝、むくんだ顔のままバスに乗り込んだ。窓の向こう、空の色が変わっていくのと同じ速さで悔しさや惨めさが心に馴染んだらやっと、お腹空いてん。

大阪に帰ってきてツアーの余韻に浸る間もなく日常が始まってしまい、あの4日間を置き去りにしているようで心苦しいなあ、あの日をちゃんと抱きしめたいなあ、と思っていたら、感染性胃腸炎。

うちの心は叫んでたんやなあ。
お腹の中で叫んでたんやなあ。

大切なものは漏らしたらあかんのんちゃうか、抱きしめて離したらあかんのんちゃうかって教えてくれたんやなあって思ったらトイレに行くたびにありがとうの気持ち。

言葉と歌だらけの部屋の中で、たくさんたくさん考えてた。
浮かんできた人たちのこともたくさんたくさん考えてた。

東京に家族のように迎えてくれる人たちができた、とても誇らしくて美しい事実。

自分を守るのはもうやめて、自分のうたを守ること、周りの人に恩を返すことをもっと考える。
そして、できへんって諦めてたことに挑んでいかなあかん。そうせな何も変わっていかへんなあって改めてそう思った。

うちはもっと恥をかこうと思う。

それでもやっぱりあれをあれするのだけはやめとく。