[コラム]BLENDY MOTHER FATHER / RED EARTH 寺澤ちゃんの
「Sank you Fantasy」(2014/09)



僕は寺澤ちゃん。8歳。
8月で7歳を卒業したんだ。
今僕がいるのは2024年9月。
今月も未来の事を皆に少しだけ教えてあげるね。
どうして子供の寺澤ちゃんが未来にいて2014年の9月にお話しているかって?
ふふっ、それはまだ謎にしておこうよ。

今は少し涼しくなってきている晩夏でしょ?こっちは気温がいつも調節されているから分からないんだけどね。

やっぱりこの時期は怪談なんてものがこっちでもよく話されているんだ。
だから最近僕が聞いたのを教えてあげるね。

まずお話に入る前に説明しとかなきゃならない事があるんだ。
2014年、蝉はまだいるんでしょ?こっちの世界でもいるにはいるんだけど、昆虫園に行かなきゃ見れないんだ。
つまり数がとっても少なくなっているの。
でも、特に日本人は夏になると蝉の声が聞きたいんだって。
だから日本中にたっくさんの蝉ロボットがいるんだ。それが昼間には鳴いている訳。
形もそっくりなんだ。
ほんとこれがうるさいんだー。でも夏って感じになるんだよ。
理解したかな?

じゃお話に入るね。
あっその前に、これは聞いた話をそのまま話すんだけど、僕が話しているのを想像したら怖くないと思うんだ。
だから、えーっと2014年だったら怪談の神様がいるでしょ?
知らない?
稲川淳二さんだよ。その人が話していると思って聞くと怖いと思うんだ。
じゃいくよ。



主人公は大学生の男の子。名前をきよふみ君にしとこうかな。
彼は就職が決まらなかった。とっても悩んでいた。何社受けても落ちるばかりだった。
きよふみ君自身も自分がどういう会社で働きたいか分からなかった。

本当は脚本家になりたかった。
しかしそんな事を言っても誰も相手にはしてはくれない。鼻で笑われるだけだと思っていた。
自分で何作か書いてコンテストに送ったりしてはいたが、鳴かず飛ばずの結果だった。

最後の夏休みに入った。
そして彼の祖母が亡くなってから初盆だった。
きよふみ君は祖母が大好きだった。幼少の頃夏休みに入ると毎年田舎に行っていた。
母方は女兄弟だったので男の子がいなかった。
祖母はとっても男の子が欲しかったようで孫のきよふみ君を何故かぼん、ぼんちゃんと呼んで可愛がった。
おもちゃやお菓子をよく買ってくれた。
緑が都会には少ないので緑のある所へ沢山連れて行ってくれた。
そこで初めての川を遊びをしたり、山というものを見た。昆虫園以外で虫を見たのも初めてだった。
とにかく色んな所に連れて行ってくれた。

葬式以来できよふみ君は田舎に帰った。
まだ緑が少しだけ残っているような綺麗な所。祖父母の趣向で今でも平屋の一軒家。
昼間に大広間で親戚が大勢集まっていた。
おい就職決まったのか?
えっ?まだ決まってないのか?
いかんなぁ、早く決めないと何処にも就職出来ないぞ。
嫁さんだってもらえないぞ。などなど散々説教じみた事を言われうんざりしていた。
誰と話していてもその質問を投げかけてくる。
きよふみ君はほとほとうんざりして黙っていた。
おじさん達はあーだこーだと話しながらお酒を飲んでいた。

きよふみ君はお酒が強くなかった。
しかし、親戚のおじさんたちは飲め飲めと言ってくる。
きよふみ君もせっかくの休みだし少々飲んでも大丈夫だろうと思い、うんざりした気持ちもあった為か飲んでしまった。

最初は楽しい。あー気分がよくなってきた。
嫌なことは忘れちゃおう。そう思い羽目を外しちゃったんだな。
飲み過ぎて夕方にはフラフラになっていた。
夕食までまだ時間がある。そう思い少し横になって眠った。
外では蝉のロボットがひっきりなしにミーンミーンと鳴いている。
けれど、こっちはもう酔っ払っているのでお構いなしにぐっすり眠れた。

夕食になって起きて行けば、親戚のおじさん達はまだお酒を飲んでいた。
おばさん達は調理ロボットが壊れていてない為、必死になってご飯を用意していた。
子供達はわーきゃー言って騒いでいる。

おー戻ってきたのか。よしよし酒を飲め。
おじさんの一人がそう言って酒をすすめてきたが、もう気分が悪い。
ご飯だって食べれそうにないくらい気持ちが悪かった。体調を壊しちゃったんだな。
大丈夫です。もう飲めないので。
そう言って断った。
おばさん達は料理を運んで来る。見たこともない料理だった。
普段料理をしない人達だから多分失敗したのだろう。
でも、胃の中に何かを入れないとさらに気分が悪くなりそうな気がしたので、無理やり口に詰め込んだ。

まずい。
散々な味だった。いや正確には味がなかった。体調を壊したくなかったので無理やり喉の奥に放り込んだ。
お腹だけは膨れた。
おじさん達はまだ飲んであーだこーだと話している。おばさん達も腰を据え一緒に飲みだしている。
おばさん達にまで就職が決まってないの?
あなたはこうだから落ちるのよ、とか訳の分からない説教までされだした。
おい彼女もいないのか、そんなだからモテナイんだなど、話は膨らみだしうんざりした気持ちになった。

もう耐えられない。親戚を横目に寝室に行くことにした。

布団に潜り込んだ。
最悪だ。就職は決まらないし脚本家になんてなれる訳ないし。
ゆっくりしようと思って田舎に来たのに親戚にこけにされ、笑いものにされるし。
あー最悪。そう思いイライラしていたが、目を閉じるとうつらうつらしてきた。
お酒で気持ち悪いうえに、こけにされ、心身ともに疲れていたのだろう、もう眠っていた。

夜中にふーっと目が覚めた。大きな屋敷で一人ずつ部屋があったので、部屋には一人。
外をなんとなしに見ると窓の外は真っ暗。
あーどうして起きちゃったんだろう?そんな事を思い、もう一眠りしようとした。
ミーンミーン。
ん?遠くでなんか聞こえる。
あー蝉ロボットが鳴いているんだ。そう思い別に気にせず、目を閉じ眠った。

今考えると少しおかしい。蝉ロボットなんだから夜中に鳴くわけがない。
昼間にしか鳴かないようにプログラムされているはずなんだ。
しかしこっちは眠たいし、疲れているからそんな事も気付かない。
どれくらい眠ったのか、またふーっと目が覚めた。
あー起きちゃったな。そう思ってなんとなしにまた窓の外を見た。
真っ暗。
フューっという風の音に混じって何か聞こえる。
ミーンミーン。遠くの方で蝉ロボットが鳴いている。
あぁ蝉ロボットが鳴いているから起きたんだな。そう思った。

疲れすぎているから眠れないのかな、あぁ最悪。もう一眠りしようと思い目を閉じた。
ミーンミーン。
ん?おかしい。さっきより蝉ロボットの鳴き声が大きい。
これじゃあ眠れない。布団に潜った。
けどなんだかおかしい。
ミーンミーンミーンミーン。
だんだんと蝉ロボットの鳴き声が大きくなってきている。
あーうるさい。なんでこんなロボット作ったんだ。馬鹿じゃないのか。イライラしてきた。
でもおかしい。
だんだんだんだんと音が大きくなってくる。

もう窓の真横で鳴いているくらいの音量だ。
ミーンミーンミーンミーン。
よく聞くとおかしい。
ミーンミーンと言う音に混じってビェービェーという呻き声みたいなのが聞こえる。
おかしい。
ビェーボービェーボー
次第にうめき声だけになってきていた。
なんだか怖い。
人のうめき声だ。
そうだ、よく考えるとおかしい、こんな夜中に蝉ロボットが鳴く訳がない。
これは蝉ロボットじゃない。
しかも生きている人間じゃない。
気付いた瞬間、もう怖い。
ビェーボービェーボー
ずっと聞こえる。布団にぐーっと潜った。でも意味が無い。うめき声はずっと聞こえる。
あー神様お願い。
どこかに行って下さい。どっかに行って下さい。祈ってもうめき声は途絶えない。

ウ゛ォーウ゛ォーウ゛ォーウ゛ォー
あぁ怖い。
完全に人が低く唸っている声だ。
どっか行って下さいどっか行って下さい。
必至に祈った。
ん?消えた?

よかった。消えた。体は汗でびっしょりになってる。


ふぅ。息を吐いた瞬間。
ウ゛ウ゛ォウ゛ォウ゛ォウ゛ォ
大きい。
おかしい。
音量がおかしい。
これは!!
いる!!部屋の中にいる。
部屋の中に入ってきている。
うぅー怖い。
お願いします。
お願いします。
ごめんなさい。
どっか行って下さい。
汗びっしょりで必至に祈っても声はだんだんと大きくなる。

ウ゛ウ゛ォウ゛ォウ゛ォウ゛ォーー
おかしい。だんだんと近づいてくる。
息遣いが分かる。
もうそこにいる。
何かが完全にそこにいる。

ウ゛ウ゛ォウ゛ォウ゛ォウ゛ォーー
だめだ。
もうダメだ。
もう頭の先にいる。息遣いも聞こえる。

ウ゛ウ゛ォウ゛ォウ゛ォウ゛ォーー
混じって、苦しそうなうぅ、、うぅ、、、
吐息が混ざっている。
お願いします。お願いします。
だんだん近づいてくる。もう潜っている布団の真上に頭が来ている。
それが分かる。
もう意識が飛びそうになっている。
見ちゃだめだ見ちゃだめだ。そう思い布団に潜って、ぐっと布団を掴んで震えている。

ウ゛ウ゛ォウ゛ォウ゛ォウ゛ォーー
もう布団の真横に顔がある。

ウ゛ウ゛ォウ゛ォウ゛ォウ゛ォーー
ふーっと意識が飛びそうになった。
その瞬間頭を撫でられた。
優しいなで方。
でも怖い。意識はもう無くなりそうだ。
瞬間、耳元で優しい声がした。


ぼん、ぼんちゃん、大丈夫よ。
あなたの好きなように生きなさい。

そこで意識がふっと無くなった。

朝、目が覚めて分かった。
祖母だったんだ。
僕が悩んでいたから励ましに来てくれたんだな。
怖がってごめんよ。ありがとう。
僕は頑張って脚本家になろうと思うよ。
そう思ったって言うんですね。


こんな話を聞かせてもらいました。

どう?怖かった?
ふふふ、面白かったでしょ?
でもなんだか僕は優しい気持ちになったんだ、この話を聞いた時。

じゃあまた来月お話聞かせてあげるね。
あっそうだ。2014年の寺澤ちゃんはyoutube番組を確か作っている時期じゃないかな?
確か、、、うんうん、今心霊スポットへ行ったって番組出来たとこだね。

https://www.youtube.com/watch?v=w2ZhX4BaFvI

これだよ。見てあげると寺澤ちゃんは喜ぶんじゃないかな?
じゃあまたね。
バイバイ


2014年現在 寺澤 尚史
facebook
https://www.facebook.com/blendy.mother.father.s
Twitter
https://twitter.com/tiruda

ロックバンドBLENDY MOTHER FATHERのvo/gtと
フォークパーティRED EARTH http://www3.hp-ez.com/hp/red-earth/page4 のvo/agtをしている。