[コラム]BLENDY MOTHER FATHER / RED EARTH 寺澤ちゃんの
「Sank you Fantasy」(2014/06)



僕は寺澤ちゃん。7歳。
いつも言ってるんだけど、今僕がいるのは2024年6月。
未来の事を皆に少しだけ教えてあげようと思ってるのね。
どうして僕がここにいるのかは話したいんだけど、話しすぎると時空間が歪んでしまうの。
歪まないように話すのは難しいから今度たっぷり時間のあるときにゆっくりお話するね。

で、今日はなんのお話をしようかな。
あっそうだそうだ。この間面白い話を書き留めてたんだ。それを今日はそのまま読んじゃうね。



孤独な女の子がいました。とてもとても孤独。
女の子は地球の下町に住んでいました。
地球は発展を遂げていましたが、昔ながらの町並みも少し残っていました。
しかし文明の発展に伴い、富裕層は昔ながらの町並みなど、通る事も見かけた事もありませんでした。
そんな場所がある事を誰も知りません。
富裕層以外の人間は少なくなったものの、下町に住むものはまだいるのです。

女の子は孤独に耐え切れずダンボールを使い、ロボットを作りました。
女の子はそのロボットを弟のように可愛がりました。
しかしそれは所詮ダンボール。動きも話しもしません。

女の子は悲しくなり、涙をポロポロ流しました。
その時です。
ピクリ。ロボットが動いたように見えました。
ガチャン。
なんとロボットが自分の力で立ったのです。

「あなた動けるの?」女の子は聞きました。
「ハイ。ボクハウゴケテハナセルヨウニナタヨ」何処かぎこちなくロボットは話しました。
女の子はとっても嬉しくなりました。
毎日色んなお話をしました。
ご飯を作り食べさせたりもしました。

時には今ではもう少なくなった自転車というものに二人で乗り、河原をサイクリングしたりしました。
そうです。皆様はご存知ないでしょうが、下町には昔ながらの雑草が生えたりしている河原があるのです。
そこでフォログラムではない本物の流れる川を眺め二人はお喋りしました。

帰りには二人で自転車の二人乗りをし、帰りました。
そこでは皆様があまり見かけた事のないであろう、夕暮れを見ました。
空がオレンジに染まり、二人とも全身オレンジ色に染まりました。
女の子はとっても幸せな気持ちになりました。
こんな発展した世の中でこんな綺麗な夕日を見て、弟と自転車に二人乗りをしている幸福な女の子は私だけではないだろうか?そんな事を思いました。

「とっても幸せね」女の子は言います。
「ハイ。ボクハトテモシアワセデス」ロボットは答え、女の子の孤独は薄らいでいきました。
毎日毎日二人は楽しく暮らしました。

しかし、月日が流れ、女の子はその生活が当たり前となっていました。
孤独がなくなってロボットの弟がそこにいるのが普通になっていました。
孤独がない事が普通の生活になっていたのです。

孤独がないのでゲームをしたり、都会に一人で出かけたりしました。
お金がある時は朝まで踊り狂って、アルコールを飲み、家に帰って眠るか、ゲームをするかの生活が続きます。
女の子はお金持ちではないのでたまにしか遊べません。

「オネーチャン、お腹空いたよ」弟は言います。

「また暇が出来たら作ってあげるからね」女の子はそう言いました。
だってダンボールで作ったロボットだもの。お腹なんて空く訳ないじゃない。
女の子は自分にそう言い聞かせ、ご飯を作りませんでした。

女の子は気付いていませんが、ロボットはみるみるうちに弱っていきました。
やはり愛情がなければロボットも弱るのかもしれません。

何日かのち、女の子は二日酔いで眠っていました。

「おね、、ちゃん、、」
弟の声で目が覚めました。
「うるさいわね。まだ眠ったばっかりなんだから起こさないでよ」

「僕、もうダメかもしれない、、、」弟の声はとても弱っていました。

「えっ、、、何が?」女の子がそう言うとロボットは倒れました。
バタン。まるで電池が切れたように動かない。

「ちょっとしっかりしてよ、、、ご、ごめんなさい。ちゃんと、ご飯ちゃんと作るから」
女の子はまた孤独を思い出していた。

「おね、、、ちゃん、、、僕はもうダメだ。ご飯いらない、、、夕日が見たい、、、」

「分かったわ」女の子はそう言うとロボットの弟を抱え自転車に乗せた。
いや、死なないで一人にしないで。
構わなかった私が悪かった。
夕日を見て元気になるならいくらでも見せるから。
これからはちゃんと大切にするから。
涙を流しながら自転車を漕いだ。

河原に到着するとちょうど夕暮れ時だった。

「ほら、あなたの見たがっていた夕日よ。ちゃんと見て。これで元気になるでしょ?ねぇ」
女の子は涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら言った。

「僕は、、、もうダメなんだ、、、最後に、、、最後に、、、この顔に付いているダンボールを取ってくれない、、、?」

「何を言ってるの。大丈夫よ。きっと元気になるわよ」

「もうダメなの、、、ダンボール取って、、、」
女の子は涙と鼻水でぐしょぐしょになりながらダンボールを恐る恐る取った。

「あっ」女の子は思わず声を上げた。そこには人間の顔があった。

「僕だよ、、、思い出した、、、?ならよかった、、、さようなら、、、」

女の子はようやく思い出した。自分に本当の弟がいた事を。
そして弟がいることを忘れて生活していた事を。
孤独を感じた弟は姉の作ったダンボールのロボットを被って生活していたのだ。






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フフフ。面白いCMでしょ?ロボットのCMだよ。
これでこの話はおしまい。
またお話するからね。
じゃあね。バイバイ



2014年現在 寺澤 尚史
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ロックバンドBLENDY MOTHER FATHERのvo/gtと
フォークパーティRED EARTH http://www3.hp-ez.com/hp/red-earth/page4 のvo/agtをしている。