[コラム]BLENDY MOTHER FATHER / RED EARTH 寺澤ちゃんの
「Sank you Fantasy」(2014/05)



僕は寺澤ちゃん。7歳。
前回に話した通り、今僕がいるのは2024年5月。
この話を聞いている皆は2014年5月でしょ。だから未来の事を少しだけ教えてあげようと思ってるんだ。
だけど、話し過ぎるとそれはそれで怒られちゃうから、話せる範囲だけなんどね。
まぁ皆が疑問に思っている事だろうけど、どうして僕がここにいるのかは長い話になるからまたゆっくりお話するね。

今日は2024年に親が子供に話しているお伽話を聞かせようと思ってるんだ。
2024年は宇宙に行ける時代になっているからお伽話も幅が広がってほんとに沢山あるんだ。

じゃあ、話すよ。ちゃんと聞いててね。
宇宙ってのはほんとに広くて、まだ見つかっていない惑星もあるんだ。
だけど、地球に宇宙人がやってきてからは知的生命体がいる惑星と地球の交流が始まったんだ。
それはあっという間に発展していったの。
地球に話せるタコみたいな宇宙人がいたり、ゴブリンみたなのとか、妖精みたいなのとか。ほんとに様々。
未だに見かけると僕はちょっと怖いんだ。ここはお伽話じゃなくてほんとのお話だよ。
ただそういう事を知っていないとお伽話が飲み込めないと思ってね。
それですごいのが僕達もそういう星に行けちゃうんだ。僕はまだ行ってないけどね。
宇宙的な座標が分かってさえいれば、何処にだってすぐ行けちゃう宇宙船があるんだ。
しかもだよ、そんなに高くないんだ。いや僕からしたらそりゃ高いけどさ。
大人の寺澤ちゃんは持っているくらいなの。つまり2014年で言えばちょっと高い車くらいだね。

あぁダメダメ話が逸れちゃった。
お伽話をするんだったね。

地球から遠く遠く離れた場所に1つの大きな惑星があったんだ。
惑星ブラザー。
そこに1人の少女が住んでいた。
でも1人ぼっちだったんだ。
大きな屋敷が見える場所だけで言えば1軒。外は見渡す限り草原。とっても綺麗な場所。
大きなブランコが庭に1つ。
だけど1人ぼっち。
昔は両親がいたんだけど、亡くなってしまった。この惑星には少女が1人。
たまに蚊がブーンと飛んでくるだけ。
バチン。悲しい音が響いた。
少女は蚊を潰すだけの毎日。

でも、生きてはいけた。
両親は自分達がいなくなる事を見越して、食料を毎日勝手に製造してくれるマシーンを作った。
だから食べ物には困らなかったの。
だけど1人ぼっち。
少女はとっても寂しかった。両親がいた時はまだ良かった。
1人はとっても寂しい。だから少女は友達が欲しかった。
インターネットはあったんだ。
だからある日、他の惑星の人と友達になる事を決めた。
自分の写真を載せて友達申請をすると誰もが友達になってくれた。
自分の心境を書けば皆が反応してくれた。仲良くなろうよ、って言ってくれた。
少女はとっても嬉しくなっちゃった。
特に仲良くなった人とはフォログラムが出てきて、あたかもそこにいるような感じで話せるんだ。
だから寂しさはやわらいだ。
だけど結局はフォログラム。そこにはいない。
1人ぼっち。
現実は蚊がブーンと飛んでくるだけ。
バチン。悲しい音がまた響いた。

で、何年か過ぎた。少女は1人の年の近い男の子と、とっても仲良くなったんだ。
それを大人は恋というみたい。僕にはまだ分からない事だけど。

あー僕も恋を知ってみたいな。一体どんな気持ちなんだろう?
フワフワしていてとってもいいものだって本には書いてあったけど。
僕にはまだ早いって大人の寺澤ちゃんが言ってた。でもなんかムカついちゃったなぁ。
子供扱いされるの嫌いなのになぁ。
って駄目だ駄目だ。話が逸れちゃった。元に戻していかなくちゃ。
何処まで話したっけ?

そう。そうだそうだ、男の子と恋をしたんだ。
少女はとっても会いたくなった。
実際に会って息遣いが分かり、手を伸ばせば触れられる状況で話がしてみたかった。
純粋にそう思ったんだ。
でもね、少女は両親からとってもきつく言われていたんだ。
他の惑星には行ってはいけないし、この惑星の座標を教えて誰かを呼んではいけない。
私達はこの星の最後の生き残りなんだ。もう絶滅するしかない運命なんだ。
他の種とは交われないんだ。受け入れなさい。悲しい事実だが。
でも最後まで生きる事は大切だからしっかり1人で生きるんだ。
絶対に絶対に誰とも会ってはいけない。
毎日毎日それを言い聞かされていた。

だから少女はそれを守っていた。自分からは会いたいとは言わなかった。
でも男の子も少女に恋をしてしまっていた。
ある日、男の子は少女に会いたいと言ったの。
でも少女は断った。両親から絶対誰にも会ってはいけないと言われていた事も話したの。
でも、男の子は引き下がらなかった。自分で頑張って宇宙船の免許を取り、宇宙船も買ったと言ったんだ。
どうして会いたい。一度でいいから会いたいと懇願した。

少女も会いたい気持ちがいっぱいだったから渋々承知してしまった訳。
で、座標を教えた。
男の子は次の大きな休みの時に行くって少女に言ったんだ。
少女も両親との約束に後ろめたさを感じながら、とっても楽しみになっていた。

でも男の子は少女には内緒でいきなり向かって、驚かそうと思ったんだって。

座標を教えてもらった次の日、男の子は宇宙船に乗って少女の惑星に向かった。
少女はいつものようにブランコに乗っていた。
いつものように蚊が飛んできた。
ブーン。
バチン。
また悲しい音が響いた。
その音はとっても切なかった。

少女は待ち続けた。でも男の子は約束の日になっても現れない。
連絡もなくなった。
新しい友達が出来て、やってくると言ってはくれるけど、毎回約束はすっぽかされて、その後連絡がなくなるんだって。
だから少女はインターネットを信じなくなった。
インターネットで仲良くなった人とはそれだけの関係なんだって思った。
それはそれで楽しんで寂しさを紛らわす為だけに使う事にしたんだって。

そして、少女はいつまでも一人ぼっちだったとさ。

これでこの話はおしまい。

ん?意味が分からないって?
あぁそうか、皆は惑星ブラザーを知らないんだったね。
惑星ブラザーはほんとにあったんだけど、他の種と交われないから絶滅したのは事実としてあるそうなんだ。

じゃもう少し分かり易く話を付けたそうかな。

男の子は宇宙船に乗って惑星ブラザーに向かった。
1日かかったんだって。
ようやく到着だ。そう思った。とっても大きな惑星で広い広い草原が見えた。
あぁなんて綺麗な所だろう。
こんな綺麗な所で育ったんだから心も澄んでいるのだなぁ。とか思ったんだって。
何処に着陸しようか、そう思いながら景色を楽しんでいた。
わっ。
目の前に巨大な、空を突き抜けるばかりの壁が現れた。
危ないっ。ぶつかる。ぶつかる。
男の子はハンドルを思いっきり回した。ぎりぎりの所でなんとか避けられた。
だけど、男の子は、わっともう一度声を上げた。
なんと壁が動いた。
危ない。
危ない。
ハンドルをぐるぐる回した。なんと壁はどんどん宇宙船を追いかけてきた。
バチン。
悲しい音が響いた。

これでこの話はおしまい。

ん?未来のお伽話の話をして時空が歪まないかって?
大丈夫。
この話はね、大人の寺澤ちゃんが作った話だから大丈夫なんだって。

えっ?えっ?
まだ意味が分からないって?
鈍感な人達だなぁ。
寺澤ちゃんが作った話だよ?
ブラザーって日本語でなんて言うの?兄弟でしょ?
そうつまり少女は巨大だったんだ。

ふふふ悲しいけど、面白いでしょ?
これでこの話はほんとにおしまい。
じゃまた話を聞かせるからね。
バイバイ

2014年現在 寺澤 尚史
facebook https://www.facebook.com/blendy.mother.father.s
twitter @tiruda

ロックバンドBLENDY MOTHER FATHERのvo/gtと
フォークパーティRED EARTH http://www3.hp-ez.com/hp/red-earth/page4のvo/agtをしている。